知る人ぞ知る! ポーリッシュ・ポタリーの街「ボレスワヴィエツ」
「ヨーロッパで食器や陶器が有名な国」と言うと、どこを思い浮かべますか?
イギリス?それともフランス、ドイツ、いや、北欧?
実は最近、日本でひそかに人気急上昇中の食器がポーランドにもあるのです。
出典:https://wabbey.net(ボレスワヴィエツ食器)
「ポーリッシュ・ポタリー(polish pottery)」「ポーランド食器」と呼ばれていますが、その中でも有名なのが「ボレスワヴィエツ(Boleslawiec)」。
ブランド名ではなく、ポーランド南西部にある小さな街の名前で、「ボレスワヴィエツ食器(陶器)」とはこの街で作られる陶器の総称です。
日本で言うなら、「有田焼」「美濃焼」などと同じような呼び方ですね。
今回は、知る人ぞ知る陶器の街「ボレスワヴィエツ」の魅力に迫ります。
出典:https://wabbey.net(さまざまな絵柄が楽しめるボレスワヴィエツ食器)
良質な粘土が取れる利点を生かし、古くから陶器生産が盛ん
ボレスワヴィエツは、チェコとドイツの国境にほど近いところに位置し、近郊の都市ヴロツワフから電車で1時間半程度。人口約4万人の小さな街です。
陶器製造に必要な良質な粘土が豊富に取れたことから、昔から「陶器の街」として発展してきました。
ボレスワヴィエツは、ドイツ語で別名「ブンツラウ」と呼ばれ、「ブンツラウ食器(陶器)」と呼ばれることもあります。
ボレスワヴィエツでは、なんと1000年以上前から陶器が製造されていたそうですが、最初に陶器職人について書物で言及されたのは1380年、つまり14世紀の終わりでした。
その後、18世紀の初めには陶器職人の組合もできるほど陶業が盛んで、当時は主に、茶色の釉薬がかかった、絵柄のないシンプルな水差しが作られていました。
1897年には、陶器職人を養成する学校が設立され、これがボレスワヴィエツ陶器の発展に大きく貢献します。
学校設立からまもない、1900年代初頭に作られたボレスワヴィエツの陶器は現在に近い絵柄のものになっています。これもまた味がありますね。
見どころも「陶器」!「陶器博物館」と夏に行われる「陶器祭り」へ
そんな陶器の街は、観光名所も「陶器」に関連した場所。
ボレスワヴィエツに来たらぜひ「陶器博物館(Museum Ceramiki)」へ。夏には日本人も多く見かけるほどの人気とか。
さらに、毎年8月に開催される「陶器祭り」にもぜひ、足を運んでみてください。
陶器祭りでは、街にボレスワヴィエツ陶器を格安で販売する屋台がたくさん出るうえ、カーニバルも見られるとあって、世界中からたくさんの観光客が訪れます。
また、工房見学や陶器の絵付け体験、アウトレットでの買い物もおすすめです。陶器好きにはたまらない街ですね。
可愛いだけじゃない!「丈夫さ」に加え、日本の食卓になじむ「素朴な色合い」
ボレスワヴィエツ陶器は、スポンジのスタンプや筆を使って一つひとつハンドメイドされています。
絵柄を作るスポンジも職人が自らカットして、絵付けしているのです。
色使いは、青と白をベースにした素朴な色合いのものが多いので、どこか懐かしく、日本の食卓にも自然となじむのも魅力の1つかもしれませんね。
さらに嬉しいのは、電子レンジ、食器洗浄機での使用がOKなだけでなく、なんとオーブンでも使えること。
出典:https://wabbey.net(青と白をベースにした柄のボレスワヴィエツ食器)
ボレスワヴィエツの食器は、専門的に言うと「陶器」よりも丈夫な「炻器」(せっき/stoneware:陶器と磁器の中間的な性質を持つ焼き物で、1100~1250℃と高温で焼成するもの)であるため、オーブンなどでの使用も可能なのです。
持つとどっしりと重く、確かに簡単には欠けたりしない安心感がある食器です。普段使いができる上、長く使えそうなのもいいですね。
伝統的な絵柄は「ピーコック・アイ」
ボレスワヴィエツ陶器は、1つの窯にも無数のデザインがあるので、どれがいいか目移りしてしまいますが、迷ったら伝統的な絵柄を選んでみるのもいいかもしれません。
それはクジャクの目という意味をもつ「ピーコック・アイ」。
絵柄がシンプルなため、複雑な絵柄のボレスワヴィエツ陶器に比べ、少しだけお手頃な値段なのも魅力です。
ボレスワヴィエツ食器を代表する4つの「窯」
ボレスワヴィエツの人気の高まりに伴って、いわゆる「偽物」も多く出回っているのも事実です。
ボレスワヴィエツ陶器と名乗れるものは、ボレスワヴィエツの土で作られたものだけ。とはいえ、素人には見分けることができません。
そこでヒントになるのが、陶器の底に押してある代表的な窯のスタンプ。以下の4つはボレスワヴィエツ食器の代表的な窯です。
- Zakłady Ceramiczne “BOLESŁAWIEC”社
- Ceramika artystyczna社
- Ceramika "Millena"社
- Ceramika“wiza”社
出典:https://wabbey.net(ボレスワヴィエツ食器)
いかがでしたか?
ポーランド食器は、イギリスやフランスの洋食器に比べて、きらびやかではありませんが、素朴で温かみがあって、使えば使うほど味が出てくる、そんな深みが魅力かもしれませんね。
参考資料
陶器博物館(Museum of Ceramics in Boleslawiec)