「有田焼や古伊万里がヨーロッパの王侯貴族を魅了し、ヨーロッパの磁器製造に多大な影響を与えた」ということは洋食器界隈ではよく知られた事実。
洋食器を扱うお店を営む者として、佐賀県の有田や伊万里はずっと訪れたいと思っていたのですが、先日、ついに九州への出張に合わせて足を運んできました。
有田焼や古伊万里についてその歴史や特徴を解説したウェブサイトはたくさんありますが、ウーバンアビーはブランド洋食器を扱うお店。
ここでは、「西洋磁器」という観点から「有田」「伊万里」をひもといてみます!
また、食器が好きなら、「ここだけは行っておきたい」見どころもご紹介しています。有田陶器市に行く予定の方、いつか行ってみたいという方は必見!これを読めば、有田・伊万里の奥深き世界に引き込まれ、有田陶器市まで待てなくなるかも。
磁器は「白い金」!ヨーロッパの王侯貴族を魅了し、次々と輸出された「有田焼」
出典:Stiftung Preußische Schlösser und Gärten Berlin-Brandenburg(Charlottenburg Palace)
ヨーロッパのアンティークショップに行くと、「あれ、これ、日本の焼き物みたい」と思う作品に出合うことがよくあります。その背景には、どんな歴史があったのでしょうか?有田焼と西洋磁器のつながりについて簡単にひもといてみましょう。
東洋から見ると、ロココ調の建築やインテリアなど西洋のものに美や憧れを感じてしまいますが、17~18世紀のヨーロッパでは逆。ヨーロッパの王侯貴族や富裕層はエキゾチックな東洋に憧れ、中国や日本で作られた白磁は「白い金」としてもてはやされていたのです!
東洋から輸入される1枚の皿と精鋭の兵士が交換されるほど磁器は高値で取引され、もうそれはそれはすごい熱狂ぶりだったんですよ。
なぜ、そんなに磁器に熱狂したのでしょうか。
17~18世紀当時、はるかかなたの東洋からやってくる磁器は王侯貴族や富裕層のステイタスを示すシンボルであり、趣味のよさをアピールする絶好の道具だったのです。
そのため、東洋の磁器を飾りたてた「磁器の間」が大流行し、イギリスのハンプトンコート宮殿、ドイツのツヴィンガー宮殿やシャルロッテンブルク宮殿、さらにオーストリア・ウィーンのシェーンブルン宮殿などヨーロッパのあちこちで見られました。
王侯貴族たちがこぞって買い集め、「磁器病」と言われるほどの収集ブームが巻き起こっていたにもかかわらず、1644年の明・清の王朝交代による内乱で中国からの磁器の供給が不安定になってしまいます。
そこで、中国に代わる磁器の供給先として注目されたのが、日本の「有田」だったのです!有田焼は江戸時代の始め1610年ごろに日本初の磁器としてすでに産声を上げており、1647年には有田焼の海外輸出が始まったのでした。
具体的にはどんな製品を輸出していたのでしょうか。有田からヨーロッパに輸出された歴史的な作品を一挙に見ることができる場所が有田町にあります。
佐賀県立九州陶磁文化館の「蒲原コレクション」です!
蒲原コレクションは、いわゆる「古伊万里(※)の里帰り名品コレクション」。
ヨーロッパ全土に散らばった有田焼を有田町出身の蒲原権氏が私財を投じて買い戻し、寄贈したのです。まさに「ヨーロッパの王侯貴族を魅了した有田焼」が一堂に会する場所なのです!
(※古伊万里とは、主に江戸時代の肥前の国(佐賀、長崎あたり)で焼かれた磁器を指します。)
約100点の展示品はヨーロッパと有田焼のつながりを感じさせる逸品ばかり。
例えば、下記写真の一番左の壺に似たものがドイツ・ベルリン郊外のオラニエンブルク城の磁器の間の天井画に描かれています。
出典:Woburn Abbey(佐賀県立九州陶磁文化館・蒲原コレクション。一番左の壺は1680~1700年代の「染付鳳凰文八角大壺」。有田製。)
また、下記はオランダ連合東インド会社(Vereenigde Oostindishe Compagnie)ゆかりの大皿。これは商館の備品として注文生産されたもので、オランダ連合東インド会社の頭文字があしらわれています。
出典:Woburn Abbey(佐賀県立九州陶磁文化館・蒲原コレクション。1700~40年代の「染付花鳥文VOC文字入大皿」。有田製。)
また、西洋と東洋の美が融合した里帰り品もありますよ!
ヨーロッパの金属工芸と有田焼が合体した時計や壺(燭台つき)です。天使と有田焼の競演、日本人にはなかなか思いつかない組み合わせですね。
出典:Woburn Abbey(佐賀県立九州陶磁文化館・蒲原コレクション。19世紀の「色絵草花鳥文壺(時計、燭台)」。有田製。)
このように、白地に藍色で絵付けをした「染付」だけでなく、多色使いの「色絵」もヨーロッパの王侯貴族を魅了したことがよくわかります。骨董の世界では古伊万里が人気ですが、その魅力は万国共通なのかもしれませんね!
あの最高級窯「マイセン」も有田焼の絵付をたくさん模倣していた!
出典:Porcelain Manufactory MEISSEN (マイセン窯の代表作「ブルーオニオン」シリーズ)
ヨーロッパで東洋の磁器が大ブームとなっていた中、指折りの東洋磁器収集家が現れます。
ザクセン選帝侯アウグスト2世(アウグスト強王)です。王は実は日本びいき!宮殿には膨大な数の古伊万里があったと言われています。
出典:Wikipedia(アウグスト2世)
そんなアウグスト2世は、コレクションを一般に公開し、自らの権力と芸術に対する造詣をアピールするのには飽き足らず、ヨーロッパ産の磁器をこの手で作り出し、高価な輸出品として国家を潤すことを思いつくのです。
東洋の磁器の現物だけを参考に、研究者が来る日も来る日も実験や試行錯誤を続け、ついに1710年、ヨーロッパ初の硬質磁器窯「マイセン」がその産声を上げました!
マイセンの誕生はその後の西洋磁器の歴史を変えたといっても過言ではありません。絵付師や成型師、彫刻家の力により、磁器を芸術の域にまで高めた功績は計り知れず、今なお西洋磁器の王者として君臨し続けています。
では、有田焼はマイセン窯にどんな影響を与えたのでしょうか?
一番特徴的なのは、「柿右衛門様式」です。「柿右衛門様式」は、「濁し手(にごしで)」という乳白色の素地に余白を生かしながら色彩豊かに絵付する「色絵(いろえ)」が特徴。
出典:Woburn Abbey(佐賀県立九州陶磁文化館。14代酒井田柿右衛門による「濁手撫子文大皿」)
初代酒井田柿右衛門が日本で初めて「色絵」の絵付を成功させたと言われていることから「柿右衛門様式」と呼ばれています。有田には今もこの伝統を受け継ぐ「柿右衛門窯」があります。
アウグスト2世が好んだ日本の磁器。マイセンでは「柿右衛門様式」の写しを作り始めました。
例えば、菊が描かれ、和食器にしか見えない深鉢や
出典:Victoria and Albert Museum (マイセン窯による柿右衛門様式の深鉢。1729-31年頃)
柿右衛門窯の典型的な図案である「竹に虎」を描いた八角皿も作られました。
出典:Victoria and Albert Museum (マイセン窯による柿右衛門様式の八角鉢。1725-27年頃)
また、形はヨーロッパ風ですが、絵付は柿右衛門様式というものも徐々に登場します。
出典:Victoria and Albert Museum (マイセン窯による柿右衛門様式のフルーツスタンド。1730-33年頃)
有田焼は西洋磁器の歴史を変えたあの超一流窯マイセンにも多大な影響を与えたことがよくわかり、なんだか誇らしい気持ちになりますね!ちなみに、有田町とドイツ・マイセン市は磁器がご縁となり、姉妹都市として交流を続けています。
実はヨーロッパでは「イマリ」と呼ばれる有田焼
実は、ヨーロッパでは有田焼は「イマリ(Imari)」と呼ばれています。「有田焼なのに、伊万里?なぜ?」と思いますよね。
そう呼ばれる理由は、当時、有田焼は近くの伊万里港から積み出しされ、長崎の出島を通ってヨーロッパに輸出されていたからなんです。伊万里港からやってくる器、そんな印象が強かったのでしょうね。
その名残は19世紀から今も受け継がれるシリーズの名称にも表れています。
「ロイヤル」と「クラウン」という2つの王室御用達の称号をもつイギリスの名窯「ロイヤルクラウンダービー」には、「オールド・イマリ」シリーズというものがあるんですよ!
出典:Royal Crown Derby Official website(Old Imari-Fluted Dessert plate)
日本風のデザインは、ロイヤルクラウンダービー窯だけでなく、他のヨーロッパの窯にも多く見られます。
例えば、18世紀に日本の焼き物「イマリ(Imari)」を目にしたイギリスのデザイナーがその美しさにインスパイアされて生み出した、エインズレイ窯の代表作「ペンブロック」シリーズなど、和室にもぴったりはまる洋食器デザインがたくさんあります。当店ウーバンアビーでもこのシリーズはとても人気があります。
出典:Woburn Abbey(イギリス・エインズレイ窯のヴィンテージ花瓶)
このように、日本の有田焼は西洋磁器に多大な影響を与えてきました。洋食器という観点から日本の焼き物を見ると、日本のよさを再発見でき、旅も器を愛でるのもますます楽しくなりますね!
器好きが有田・伊万里に行くなら、「ここだけははずせない」4大スポット!
出典:Woburn Abbey(陶山神社)
さて、ここからは器好きな方が有田・伊万里を旅行するならはずせない4大スポットをご紹介します!私は有田町をレンタサイクルで丸1日(10~17時)、伊万里は翌日の午前中に巡りました。
有田陶器市で器を買ったあとに立ち寄れるところも多いので、これから行く方、いつか行ってみたいと思っている方はぜひ、チェックしてみてくださいね!
スポット1)入館料無料!有田焼の歴史的変遷がよくわかる「佐賀県立九州陶磁文化館」
出典:Woburn Abbey(佐賀県立九州陶磁文化館・蒲原コレクション)
九州の陶磁器が一堂に会する場所なのに、なんと入館料無料です!有田駅から徒歩約12分ですが、駅からは坂道なのでレンタカーかレンタサイクル(電動自転車が楽で◎)をおすすめします。
ここは前述の蒲原コレクションはもちろん、「柴田夫妻コレクション」も必見!
網羅的、体系的に収集されたいわゆる「古伊万里コレクション」約1,000点が展示されています。学術的にも極めて貴重ということで、国の登録有形文化財に工芸部門の第1号として登録されています。
出典:Woburn Abbey(佐賀県立九州陶磁文化館・柴田夫妻コレクション)
そして、ここはトイレもさすが!デザイン違いのトイレもあるので、ぜひ、行ってみてみくださいね。
出典:Woburn Abbey(佐賀県立九州陶磁文化館のトイレ)
<佐賀県立九州陶磁文化館>
住所:佐賀県西松浦郡有田町戸杓乙3100-1
電話番号:0955-43-3681
営業時間:9:00~17:00(月曜、年末年始除く)
スポット2)有田らしい記念写真ならココ!白磁でできた大鳥居や狛犬が美しい「陶山神社」
出典:Woburn Abbey(陶山神社)
有田・伊万里らしいスポットならぜひ、「陶山(すえやま)神社」へ。
ここは応神天皇を主神とし、有田焼の生みの親である朝鮮出身の陶工「李参平(りさんぺい)」を祀る有田の総鎮守です。
出典:Woburn Abbey(陶山神社)
見どころは有田らしい神社の佇まい。例えば、磁器製の狛犬や
出典:Woburn Abbey(陶山神社)
磁器製の灯籠もあり、普通の神社とは雰囲気がまったく異なります。磁器製の絵馬や、染付風のかわいいお守りなどもあり、お土産にもおすすめですよ!
出典:Woburn Abbey(陶山神社)
また、小高い場所にあるので、有田の街を一望できるのもいいところです。個人的には、陶祖の李参平公の碑にお参りしたかったのですが、数年前の大雨で道が閉ざされているそうで、残念ながら行くことができませんでした。次回はぜひ行ってみたいと思います。
<陶山神社>
住所:佐賀県西松浦郡有田町大樽2-5-1
電話番号:0955-42-3310
スポット3)せっかくだから有田を代表する3つの窯元へ!柿右衛門窯、今右衛門窯、そして源右衛門窯
出典:Woburn Abbey(源右衛門窯)
有田に行くなら、代表的な3つの窯「柿右衛門窯」、「今右衛門窯」、そして「源右衛門窯」を訪れてみてください。それぞれ違った風情がありますよ。
●ドイツの一流窯マイセンにも影響を与えた「柿右衛門窯」
ここまでお読みいただいた方は「柿右衛門窯」はもうおわかりですね。「柿右衛門様式」を開発し、日本やヨーロッパで一世風靡したことで有名な柿右衛門窯。建物からもその伝統を感じさせる佇まいです。
出典:Woburn Abbey(柿右衛門窯)
ここではもちろん、作品を購入することができますし、奥にはミニギャラリー窯があり、代々伝わる逸品を見ることもできます。ギャラリーは入り口まで「柿右衛門様式」です!(中は写真NGだったのでご了承ください)
出典:Woburn Abbey(柿右衛門窯)
<柿右衛門窯>
住所:佐賀県西松浦郡有田町南山丁352
電話番号:0955-43-2267
営業時間:9:00~17:00 (年末年始除く)
●佐賀藩時代には門外不出だった「色鍋島」の美を今に継承する「今右衛門窯」
出典:Woburn Abbey(今右衛門窯)
「柿右衛門」「今右衛門」・・・似たような名前で混乱してしまいますね。正式名称「今泉今右衛門家」は「色鍋島」の技術をよみがえらせ、今に伝える窯元です。
出典:Woburn Abbey(今右衛門窯)
「色鍋島」とは何かを語るには、まず、「鍋島焼」のことを知る必要があります。
鍋島焼は、17~19世紀にかけて佐賀藩(鍋島藩)の藩直営の窯で製造された磁器。つまり、藩主の御用品や将軍家や大名への献上品としてのみ作られたもので、一般庶民は手にすることができない最高級品でした。
しかし、明治維新により佐賀藩(鍋島藩)の窯制度が廃止になり、鍋島焼の窯は藩の保護を失い、苦境に立たされます。そこで、今右衛門窯は、素地から絵付まで一貫した制作を始め、江戸時代の「色鍋島」の技術を見事、よみがえらせました。
鍋島焼の中でも人気が高い「色鍋島」は、染付の青色に赤、黄、緑の三色だけで表現されています。藩窯時代から続く完璧な成形と気品のあるデザインが特徴です。
同じ佐賀で作られながら「有田焼」や「古伊万里」はよく耳にし、TV番組などでも骨董の品定めがされるのに、鍋島焼についてはあまり聞いたことがないと思った方がいるかもしれません。
その理由は、鍋島焼が将軍や大名への献上品だったという特性から、そもそも数も少なく、市場に出回っていないということもあるそうです。
<今右衛門窯>
住所:佐賀県西松浦郡有田町赤絵町2-1-15
電話番号:0955-42-3101
営業時間:8:00~17:00 (第一日曜日、12/30~1/5、8/15~16除く)
●古伊万里の心を受け継ぐ「源右衛門窯」
出典:Woburn Abbey(源右衛門窯の一角)
有田に窯を開き260年以上の源右衛門窯。「柿右衛門様式」の柿右衛門窯、「鍋島様式」の今右衛門窯に対して、「古伊万里様式」ともいえるデザインが特徴です。
デザインだけでなく、現代の暮らしに合うものを提案し、風呂敷やランチョンマットなども販売したり、東欧ハンガリーの名窯「ヘレンド」とコラボしたりする、チャレンジ精神にあふれた窯元です。
出典:Woburn Abbey(源右衛門窯)
そんな源右衛門窯の柔軟さや遊び心は窯の敷地の至るところで見られます。
例えば、ショップの外にあるトイレ。女性用トイレの表示の陶板やドアノブ、ほしくなりますね♪
出典:Woburn Abbey(源右衛門窯)
私が訪れた日は日曜日で残念ながら工房は閉まっていましたが、外からは眺めることができました。ショップは開いていましたよ。
出典:Woburn Abbey(源右衛門窯)
<源右衛門窯>
住所:佐賀県西松浦郡有田町丸尾丙2726番地
電話番号:0955-42-4164
営業時間(ショールーム):平日:午前8:00~午後5:00、土・日・祝日:午前9:00~午後5:00(※窯元とショールームは営業している日が異なります。下記HPで営業日を確認して訪問することをお勧めします。)
スポット4)有田に行くなら伊万里にも!「大川内山」で佐賀藩御用窯の技術にぜひ、触れて
出典:Woburn Abbey(大川内山の一角)
有田に行くなら、少し足を伸ばして伊万里の「大川内山」にぜひ、行ってみてください!「大川内山」とは、約200年もの間、佐賀藩(鍋島藩)の御用窯が置かれていた秘窯の里。
実は伊万里まで足を伸ばすか迷ったのですが、行ってよかったです!
その理由は3つ。1つは大川内山には有田とは違った魅力がたくさんあったこと、また、有田に比べて見どころがぎゅっと1か所にまとまっていて効率的に巡ることができること、さらには美しい自然や窯の景色を眺めながらのよいお散歩となり、リフレッシュできたことです。
伊万里は有田から電車で約25分。私は有田町を巡った翌日の午前中を使って足を運びました。
まず大川内山でぜひ、訪れてほしいのが「鍋島御庭焼」の窯元。
出典:Woburn Abbey(鍋島御庭焼)
「御庭焼(おにわやき)」とは、江戸時代、大名が自分の好みに合わせて居城や藩邸内に窯を築き焼かせたもの。この「鍋島御庭焼」は鍋島藩御用窯の唯一の直系の窯元です。ここは鍋島藩の家紋「杏葉」を使うことが認められている由緒正しい窯なのです!
出典:Woburn Abbey(鍋島御庭焼)
私が訪れたときは幸運なことに鍋島御庭焼五代目の市川光春さんにお会いすることができ、興味深いお話をたくさん伺いました。
特に印象に残ったのは「鍋島御庭焼は、お殿様や将軍様に献上するお品を作っていたことから、おめでたい意味や幸福への願いを託した『吉祥文様』が多く取り入れられている」ということ。
出典:Woburn Abbey(鍋島御庭焼五代目の市川光春さん)
そう言われてあらためて見てみると、梅などおめでたいモチーフばかり。私は迷いに迷って「桃」の吉祥文様の豆皿を購入。少しずつ吉祥文様の豆皿を集める楽しみができました!
出典:Woburn Abbey(鍋島御庭焼・桃の吉祥文様をあしらった豆皿)
また、大川内山は自然豊かな場所で晴れている日は散策に最高!歩きながら、磁器にまつわるいろいろな場所を見ることができます。例えば、磁器の原料である「陶石」を細かく砕くため、水の力を利用した大型の臼が実際に動いていたり、
出典:Woburn Abbey(大川内山・唐臼小屋)
薪で磁器を焼く、昔ながらの「登り窯」が再現されていて、そのスケールの大きさに触れることができます。
出典:Woburn Abbey(大川内山・登り窯)
<大川内山(鍋島藩窯公園)>
住所:佐賀県伊万里市大川内町26
磁器をもっとマニアックに愉しみたい方向けのオススメスポット2選
このブログのタイトルは「有田・伊万里~ヨーロッパの王侯貴族を魅了した磁器のルーツを巡る旅~ 」。
私が有田・伊万里に足を運びたかった理由は、美しい磁器や窯元を見るだけでなく、磁器の元となる陶石の採掘場や登り窯を実際に見て、そのルーツに触れたかったというのもあります。以下の2つは磁器が作られた江戸時代に思いを馳せることができるスポットです!
マニアックなスポット1)すべてはここから始まった!磁器の原料「陶石」が採れる「泉山磁石場」
出典:Woburn Abbey(泉山磁石場)
ここは有田焼の原料となった陶石の採掘場です。17世紀の始め、有田焼の生みの親である朝鮮出身の陶工「李参平」により磁器の原料である良質な陶石が発見され、それが日本初の磁器である有田焼の誕生につながりました。現在、採掘は行なわれておらず、有田焼は熊本・天草の陶石を使用して作られています。
出典:Woburn Abbey(泉山磁石場)
それにしてもこんな黄色っぽい石から白い磁器ができるなんて不思議ですね!
<泉山磁石場>
住所:佐賀県西松浦郡有田町泉山1-33
マニアックなスポット2)焼き物の町らしい!窯の耐火レンガで作られた「トンバイ塀」がある裏通り
出典:Woburn Abbey(トンバイ塀)
メインストリートから1本、道を入るとこんなに風情のある景色が。
出典:Woburn Abbey(トンバイ塀に向かう道)
ここを抜けると、トンバイ塀があります。トンバイとは、磁器を焼くときの「登り窯」を築くために用いた耐火レンガのこと。この廃材や使い捨ての窯道具を赤土で塗り固めて作った塀が焼き物の町らしい風情を漂わせています。
出典:Woburn Abbey(トンバイ塀)
<トンバイ塀>
住所:佐賀県西松浦郡有田町上幸平
<おまけのスポット>
旅行の楽しみは食べ物ですよね。疲れたら、有田らしい場所でひと息ついて。美しい和デザインの車が目印の喫茶店「ギャラリー有田」は休憩におすすめです!
出典:Woburn Abbey(ギャラリー有田)
ここではなんと約2,000種類のカップ&ソーサーから自分の好きなデザインのものを選んでコーヒーや紅茶を楽しむことができるんです。
出典:Woburn Abbey(ギャラリー有田)
私は有田名物「呉豆腐(ごどうふ)」に黒蜜をかけた甘味と紅茶のセットをいただきました。豆乳プリンのように、つるんとしてのど越しがよく、暑い日にぴったりの甘味でした。
出典:Woburn Abbey(ギャラリー有田・呉豆腐の甘味)
余談ですが、美しい洋食器も飾られていて(展示のみ。使用不可)、これもまた器好きの方にはおすすめのポイントです!
出典:Woburn Abbey(ギャラリー有田)
<ギャラリー有田>
住所: 佐賀県西松浦郡有田町本町乙3057
電話番号:0955-42-2952
営業時間:9:30~17:00(年末年始除く)
終わりに。
以上、洋食器を扱うお店として、有田・伊万里の磁器を「西洋磁器」という観点から見てきました。現地に足を運んだことで、日本の磁器の歴史の奥深さや、すばらしい技術が日本にあることを再発見できました。有田陶器市の季節もいいけれど、陶器市でない季節は、よりゆっくり巡ることができますよ。機会があればぜひ、足を運んでみてくださいね!
出典:Woburn Abbey(有田町の橋を装飾する磁器。街の至るところでこのような美しい磁器に触れられます)
<参考資料>
佐賀県立九州陶磁文化館監修 『欧州貴族を魅了した古伊万里―蒲原コレクションー』(有田町教育委員会)
長谷川楽爾監修他 『世界やきもの史』(美術出版社)
大平雅巳 『西洋陶磁入門』(岩波新書)
松井信義『知識ゼロからのやきもの入門』(幻冬舎)
Stiftung Preußische Schlösser und Gärten Berlin-Brandenburg