出典: ウェッジウッド日本公式サイト
高級食器ブランドとして世界中の人から愛されている「ウェッジウッド(Wedgwood)」。結婚式の引き出物などで1つは持っている方もいるかもしれませんね。
しかし、ウェッジウッドの魅力は引き出物などに多いシンプルな食器だけではありません。クラシカルな花柄や現代的なパターンなど、さまざまなテイストのシリーズがそろっています。
今回は、ウェッジウッドが今なお愛され続けている秘密と人気シリーズをご紹介します。これを読めば、きっとあなたもウェッジウッド通!
世界の王侯貴族、豪華客船や一流ホテルに選ばれ続けてきたウェッジウッド
現在も英国王室の御用達ブランドとして愛され続けるウェッジウッド。これまでも世界の王室や貴族をはじめ、豪華客船、一流ホテルでも採用され、最高級陶磁器ブランドの一つとして不動の地位を築き上げています。
なぜ、250年以上の時を超えて今なお、世界中で愛され続けているのでしょうか。
その秘密をひもとく鍵は創設者にあるようです。人気シリーズの紹介に入る前に、簡単にウェッジウッドの歴史をのぞいてみましょう。
ウェッジウッド社は、1759年にイギリスでジョサイア・ウェッジウッドによって創立されました。
出典:Wikipedia(ジョサイア・ウェッジウッド)
代々、陶工を生業とする一家の13子として生まれたジョサイア。のちに「英国陶工の父」と呼ばれるまでになります。それには3つの理由がありました。
1つ目は、ジョサイアが実験や研究を繰り返すことでさまざまな新素材や陶器を生み出したこと。
実はジョサイアは幼い頃にかかった天然痘によって、陶工の命でもある足が不自由になり、ろくろを回せなくなってしまったのです。
しかし、そのハンデに屈せず、持ち前の情熱と研究熱心さによって、「体を駆使する陶工」から、唯一無二の「知恵を駆使する陶工」へ方向転換し、それまでになかった斬新な陶器を世に送り出していくのです。
例えば、なめらかな乳白色の硬質磁器「クリーム・ウエア」や、パステルカラーに繊細な装飾が施された「ジャスパー・ウエア」はその好例です。この2つは詳しく後述します。
※1774年に発表された最初のクイーンズ・ウエア(クリーム・ウエア)のカタログに掲載されていたフルーツかごの復刻版。
2つ目は、世の中の流行をいち早くとらえ、人々が望むものを次々と開発したこと。
当時、上流階級の間での流行した新古典主義(古代ギリシャやローマなど荘重な文化を重んじる思想)を取り入れ、遺跡から出土した古代の装飾品のような陶磁器を次々と生み出していきました。
出典:World of Wedgwood(First Day’s Vase Black Basalt-1769)
※ファーストデイの壺。1769年、エトルリアに新工場が開窯した初日にジョサイアの手によって作られた。
また、マーケティングにも長け、共同経営パートナーとともに流通や販売の面でも斬新なアイディアを形にしていきます。例えば、陶磁器を運ぶための運河の建設や、当時としては珍しい、倉庫一体型のショールームをロンドンに開設するなど、ビジネスマンとしても才能があったのです。
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(ショールームの様子)
3つ目は、優れた研究者・ビジネスマンでありながら、社会慈善家でもあったこと。
ジョサイアが生きていた当時は、奴隷貿易が盛んでした。黒人を「物」同然に扱い、金もうけをする商人がいる一方で、良心と良識に従い、奴隷貿易廃止を唱える機運も高まってきます。そんな中、ジョサイアは自費で奴隷廃止運動に参加するなど、今で言うCSR(企業の社会的)活動も積極的に取り組みました。
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(「奴隷のメダリオン」)
※奴隷制度反対運動のためにジョサイアが制作した。
上記の3つの理由を証明するかのように、英国王室御用達(Royal Warrant)ブランドを紹介するウェブサイトでも、ウェッジウッドは以下のように称えられています。
ウェッジウッドは、1759年にジョサイア・ウェッジウッドによって設立された、イギリスを象徴する高級生活雑貨ブランドです。素晴らしい職人や陶工だけでなく、また並外れたパイオニアであり、さらに慈善家でもあり、マーケティングのプロでもあります。250年以上にわたり、真のイギリスの文化的なアイコンであり続け、また、イギリスの起業家精神と職人技の証となっています。
ウェッジウッドの食器がもつ優美さやその技術力の高さだけでなく、慈善家である側面やマーケティングセンスの高さなど総合的な評価を受けていることで、今日でもなお、英国王室御用達の称号を保持し続けているのですね。
世界の王室や上流階級をとりこにしたウェッジウッド3つの代表作
「ウェッジウッド」がその名声を手にするきっかけとなった3つの代表作を紹介します。
1)英国王室御用達の称号を手にするきっかけになったクリーム色の陶器「クリーム・ウェア」
出典: ウェッジウッド日本公式サイト(クリーム・ウエア)
当時のヨーロッパは、白い素地に繊細な絵柄が浮かび上がる中国の磁器や日本の伊万里焼が「白い金」と呼ばれ、もてはやされていた時代。中国や日本の磁器と同じような陶器を作ろうと、ヨーロッパでもクリーム色の陶器の開発が盛んに行われます。
ジョサイアも日々研鑽に励み、より白く、なめらかで光沢のある陶器を独自の製法でついに生み出します。それが国王ジョージ3世の妻シャーロット王妃にも納められ、1766年に「クイーンズ・ウェア(女王の陶器)」として王室御用達の栄誉を手にすることになるのです。
そしてその評判はヨーロッパを超え、はるかロシアにも届きます。女帝・エカテリーナ2世は、サンクト・ペテルブルク近郊にあった宮殿で使用するために、計952点、50人分のディナーセットをウェッジウッドに発注したのです。
「フロッグ・サービス」と名付けられたこのディナーセットには、この「蛙の宮殿」にふさわしく、一つひとつにエメラルド・グリーンで蛙の紋章が描かれました。
この商品をストアで見る→クイーンズ・ウェア
2)「碧玉」という意味の気品高い「ジャスパーウェア」
薄い水色に白地の美しい装飾、一度は目にしたことがある方も多いかもしれない「ジャスパーウェア」。実は、これもジョサイアの発明の一つなのです。
ジョサイアが生きた18世紀はエジプトなどの遺跡の発掘が始まり、ヨーロッパの知識層や王侯貴族の間で古代ギリシャやローマ時代のものがもてはやされていました。ジョサイアは、その流行をいち早くとらえ、古代ギリシャやローマのカメオなどの装飾模様をモチーフにしたものを開発しようと挑戦します。
数千回もの試行錯誤の結果、1774年についに完成させました。ジャスパーウエアといえば、ペールブルー(薄い水色)が最も有名ですが、薄いピンクや薄い緑など他の色のバリエーションもあるんですよ。
※ジョサイアが試行錯誤して開発した ジャスパーウエアの色見本。1773年のもの。
この商品をストアで見る→ジャスパー・ウェア
3)古代ギリシャ・ローマへの憧れから、陶器を「芸術作品」に洗練させた「ポートランドの壺」
前述のように、上流階級の間では「新古典主義」と呼ばれる、古代ギリシャやローマ文化への憧れが高まっていました。
そんなある日、ジョサイアは紀元前に作られたという、古代ローマのカメオ・グラスの傑作「ポートランドの壺」を目にする機会に恵まれます。そのすばらしさに感動したジョサイアは、その壺を再現すべく、ジャスパーウエアの技術を使ってこのポートランドの壺のレプリカを作ることに取りかかります。
1786年から4年ものの歳月をかけ、研究に研究を重ね、1790年についに完成します。この芸術的な作品は、ウェッジウッドの高い技術と熟練の象徴となり、評判を呼びました。のちに、ウェッジウッドのロゴスタンプにも使用されるほど、ウェッジウッドの代表作となります。
なお、ジョサイアが見た本物の「ポートランドの壺」は、現在、英国ロンドンの大英博物館で見ることができます。
ウェッジウッドが250年以上のもの間、世界中で愛されつづける理由とは?
出典:ウェッジウッド日本公式サイト (フロレンティーン)
ウェッジウッドが今なお、選ばれ続ける理由とは何なのでしょうか。
ここまで見てきたように、ジョサイアは「職人魂と進取の気性」「既成概念にとらわれない柔軟な発想」によって、一代でウェッジウッドを英国の一地方の窯から、世界有数の窯に作り上げました。
このようなジョサイアの精神と確かな技術が今日まで脈々と受け継がれていること、これこそが、愛されつづける理由なのではないでしょうか。
あなたはどれが一番好き?5つのタイプから選ぶウェッジウッド人気シリーズ
大変お待たせいたしました!ここからは、いよいよウェッジウッドの人気シリーズを5つのタイプにわけて紹介します。
1)ウェッジウッドらしい繊細さがお好みのあなたに!王道シリーズ「ワイルド・ストロベリー」と「ジャスパー・ウエア」
まず、始めにウェッジウッドを代表する2つのシリーズ「ワイルド・ストロベリー」と「ジャスパーウェア」をご紹介します。
「ワイルド・ストロベリー」
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(ワイルド・ストロベリー)
可憐な赤い野いちご、愛らしいピンクの小花、繊細なグリーンリーフに、華やかなゴールドの装飾・・・1964年に誕生し、以来50年以上、世界中で愛され続けている人気シリーズ。
夏のイギリスの自然やイングリッシュ・ガーデンにインスパイアされた、女性らしい美しさをたたえたデザインです。
この商品をストアで見る→ワイルドストロベリー
ワイルド・ストロベリーは他にも、3つの種類があります。
「ワイルド・ストロベリー・アーカイブ」:18世紀後半のデザインをベースに出典:ウェッジウッド日本公式サイト(ワイルド・ストロベリー・アーカイブ)
「ワイルドストロベリー・ホワイト」:ワイルド・ストロベリーを浮彫で表現し、電子レンジや食洗機もOK
「ワイルド・ストロベリー・カジュアル」:日本の食卓に合わせた無駄のないサイズで、毎日の食卓でも大活躍
「ジャスパーウェア」
出典: ウェッジウッド英国公式サイト(ジャスパーウェア)
ギリシャ神話や古代ローマ、可憐な花をモチーフにしたパステルカラーの花瓶や置物は生活をぱっと華やかにしてくれます。大切な方へのお祝いにプレゼントするのもいいですね。
この商品をストアで見る→ジャスパー・ウェア
2)英国らしい華麗なデザインがお好みのあなたに「ワンダー・ラスト」と「スイート・プラム」
「ワンダー・ラスト」
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(ワンダー・ラスト)
ジョサイアが生きた時代は、富裕層の間で「グランド・ツアー」と呼ばれる世界見聞旅行が流行していました。そのグランド・ツアーで、ドイツ、ネパールなど世界各地のデザインにインスパイアされて完成したのがこのシリーズ。
中でも人気なのが、「ミッドナイト・クレーン」と「アップル・ブロッサム」。
「ミッドナイト・クレーン」にあしらわれている鶴は、幸福と長寿のシンボル。静かな夜にたたずむ鶴と花が印象的なシックなデザインです。
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(ワンダーラスト、ミッドナイト・クレーン)
一方、「アップル・ブロッサム」はイギリスでは昔から愛と平和のシンボルとして大切にされてきたモチーフ。可憐なりんごの花がティータイムをより輝く時間にしてくれます。
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(ワンダーラスト、アップル・ブロッサム)
この商品をストアで見る→ワンダーラスト
「スイート・プラム」
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(スイート・プラム)
パステル画のような温かみのある、やわらかい色合いが人気のシリーズ。英国らしい華やかさが年代を問わず愛されるパターンです。
3)時空を超えて愛される伝統的なパターンが好きなあなたに クラシカルシリーズ「タフェッタ・フラワー」と「フロレンティーン」
ここでは、18~19世紀から愛されている伝統パターンを使ったシリーズを紹介します。
「タフェッタ・フラワー」
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(タフェッタ・フラワー)
タフタという平織物の畝(うね)風の浮彫の白地に、18世紀のパターンブックに記録されているモチーフをもとにした花柄が特徴です。電子レンジや食洗機もOKで普段使いにもうれしい逸品です。
「フロレンティーン」
16世紀のグロテスク文様を基に、ギリシャ神話の「グリフィン」をモチーフにした、19世紀後半からあるパターン。ティーポットやデザート皿などアイテムも充実しているので、トータルコーディネートができるシリーズです。
4)やっぱり白が好き!なあなたにぴったりシンプルシリーズ「フェスティビティ」と「ジオ」
ここではどんなシーンにも溶け込むシンプルなシリーズを取り上げます。
「フェスティビティ」
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(フェスティビティ)
「祝祭」という意味を持つ人気のシンプルなシリーズ。たわわな果物や花を立体的に描いた縁取りが料理をさらに引き立てます。色は、ホワイト、ブルー、ピンクの3色に加え、ホワイトにラズベリーのアクセントが入ったものもあります。
この商品をストアで見る→フェスティビティ
「ジオ」
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(ジオ)
モダンな印象のシェイプに、ハチの巣のエンボスで上品さが加わっています。電子レンジや食洗機にも入れることができ、カジュアルにもスマートにもお使いいただける、毎日の暮らしを上質にするシリーズです。
5)洗練されたデザインがお好みのあなたに コンテンポラリーシリーズ「ルネサンス・ゴールド」と「ピーターラビット」
「ルネサンス・ゴールド」
出典:ウェッジウッド日本公式サイト(ルネサンス・ゴールド)
「ルネッサンス ゴールド」は、ウェッジウッド創業時のスタイルを現代風にアレンジしたシリーズ。楕円の模様は、ウェッジウッドの象徴である「ジャスパー カメオ」がモチーフとなっていて、上質なひとときを演出します。
「ピーターラビット」
出典: ウェッジウッド英国公式サイト(Be Inspired/Peter Rabbit & Friends)
世界中で愛される英国のお話「ピーターラビット」。ウェッジウッドの「ピーターラビット」シリーズには、作者「ベアトリクス・ポター」のオリジナルイラストが描かれています。出産、誕生祝いにはもちろんのこと、ピーターラビットファンにもおすすめのシリーズです。
いかがでしたか?
ウェッジウッドは多種多様なシリーズをそろえているので、選ぶのも楽しいですね。じっくり味わい、あなただけの逸品に出会ってください!
さらに、ウェッジウッドの世界観に触れてみたい方は、発祥の地である英国「ストーク・オン・トレント」の街に足を運ぶのもおすすめ!
今回ご紹介したお宝たちを堪能できる博物館や、憧れのウェッジウッドでの陶芸体験やモノづくりの行程の見学もできる「ワールド・オブ・ウェッジウッド(World of Wedgwood)」、日本ではお目にかかれないウェッジウッド製品にも出合えるかもしれないアウトレット、さらに、ウェッジウッド家ゆかりの邸宅を改装したホテル「ジ・アッパー・ハウス」もあります。
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参考資料
The Royal Warrant Holders Association
『欧州陶磁紀行』(世界文化社)
『西洋陶器入門』(岩波新書)
『すぐわかる ヨーロッパ陶磁の見かた』(東京美術)