ヴァンセンヌへのアクセスと観光スポット
ヴァンセンヌは、フランスパリ東部、ヴァル・ド・マルヌ県のコミューン。パリメトロ1号線の終着駅・シャトードヴァンセンヌ(Chateau de Vincennes)にあります。
ヴァンセンヌ観光の際のお勧めスポットといえば、ヴァンセンヌの森でしょう。
皇居の6-7倍もの敷地面積を誇るこの広大な森には、12世紀建造の古城・ヴァンセンヌ城が佇んでいます。
古くは王族が利用し、17世紀にはルイ14世がハネムーンにも訪れたそう。その後、この城は要塞として使用されるなど、様々な時代を乗り越えます。
出典: depositphotos.com(ヴァンセンヌ城)
そして今このヴァンセンヌの森はパリジャンたちの憩いの場所となっています。
春には移動遊園地(Foire du Trône)が開設され、可愛らしい動物園があるのも見逃せません。また美しい花園や湖を散歩するのも良いでしょう。
近くのブーランジェリーでパリジャンらしくハムチーズサンドを買ってピクニックを兼ねて訪れるのも素敵なパリの過ごし方ですね。
出典:Office du Tourisme et des Congrès de Paris (ヴァンセンヌの森)
ヴァンセンヌ窯の発展をもたらした2人の技術者
18世紀中頃に設立されたヴァンセンヌ窯。実はフランス王立窯として最も有名な「セーヴル窯」の前身だったのが、このヴァンセンヌ窯なのです。
18世紀、東洋風デザインによって人気を博していた、パリ北東郊外のシャンティイ窯で働いていたデュボア兄弟(Robert et Gilles Dubois)。
当時の大蔵大臣オリー・ド・フリュビー(Orry de Fulvy)によって招かれ、1740年頃、パリ東部のヴァンセンヌ城内に工房を設立します。
しかし、彼らの技術力の不十分さによって、ヴァンセンヌでの陶磁器生産は失敗続きに終わります。
負債だけが膨れ上がるヴァンセンヌ窯。
業を煮やしたフリュビー大臣は、この兄弟を追放する形で、同じくシャンティイ窯出身の陶工ルイ・フランソワ・グラヴァン(Louis François Gravant、約1715 - 1778年)を新ディレクターに任命します。
グラヴァンは根気強くヴァンセンヌでの陶磁器生産に奮闘し、そんな努力の甲斐あって、彼はヴァンセンヌ窯での軟質陶磁器生産を成功させ、その高い品質は瞬く間にフランス王室にまで知れ渡ります。
出典:Wikipedia(ヴァンセンヌ軟質磁器、1749-53年)
そして、1752年以降、有能な化学者ジャン・エロット(Jean-Hellot、1685 - 1766)の手によってヴァンセンヌは素晴らしいデザイン革新をも生み出すのです。
高品質と美しいカラーリングが特徴のヴァンセンヌ陶磁器
ではヴァンセンヌ窯の陶磁器には、どのような特徴があるのでしょう?
当時フランスで主流となっていたのが軟質磁器という1200℃前後の低温でじっくり焼き上げる方法のため、繊細で透明感をだせるいうメリットがある一方で、この方法は工房建築の膨大な初期投資の割に、焼き上げ途中に変形しやすいことから歩留りが悪く、利益をもたらすのが難しい事業でした。
しかし、シャンティイ窯で確かな技術力を磨いたグラヴァンの指揮によってヴァンセンヌの軟質陶磁器生産は大きく発展し、当時ヨーロッパ陶磁器のトップに君臨していたドイツ・マイセンにも劣らぬ高品質である、と呼ばれるようになりました。
また、ヴァンセンヌのユニークなデザインとして見逃せないのが、彼の妻グラヴァン夫人率いる女性陶工たちによって製作された「フローリスリー(La Fleurisserie)」という磁器製の花シリーズです。
生花さながらの繊細な花弁が表現された、花をモチーフにした陶磁器は、後にルイ15世の公妾ポンパドール夫人も愛したと言われます。
出典:Royal Collection Trust (The Sunflower clock)
最後に、ヴァンセンヌが生んだ革新技術としてご紹介したいのが、その美しいカラーリングです。
化学者ジャン・エロットは様々な新しい染料を使い、格調高い濃紺色の「ブリュ・ド・ロワ(Bleu de Roi、王の青)」、瑠璃色「ラピスブルー(Bleu Lapis、ラピスの青)」など、フランス陶磁器界で大ブームを起こす、素晴らしいカラーリングを数々発表したのです。
出典:Wikipedia(ヴァンセンヌ軟質磁器、ブリュ・ド・ロワ、1753年)
出典:Royal Collection Trust (ヴァンセンヌ軟質磁器、ラピスブルー、1760年)
その後、ヴァンセンヌ窯は、1751年王立ヴァンセンヌ窯となるものの、工房面積の狭さから、1756年にセーヴルに移され、閉鎖されました。
たった18年という短い期間で、その後のフランス陶磁器界の技術とデザインのベースを作ったヴァンセンヌ窯。ぜひ訪れてみてくださいね。
参考資料
Office du Tourisme et des Congrès de Paris