素朴で重厚な炻器(ストーンウェア)の日用品から始まった歴史
1815年、イギリスの首都ロンドンのテムズ河近くの街ランベス(Lambeth)にて、ロイヤルドルトン(Royal Doulton)は産声を上げました。
出典: depositphotos.com (ロンドン、ランベス・ブリッジ)
1815年といえば、ナポレオンがワーテルローの戦いで、ウェリントン将軍率いるイギリス軍に敗れ、1796年からはじまったナポレオン戦争が実質的に終結した年。
このナポレオン戦争は、もともとフランス革命を諸外国の干渉から守るための戦争としてはじまりましたが、ナポレオンが実権を握るにしたがって戦線が拡大し、ヨーロッパ大陸での王制・貴族制を崩壊させ、新興市民層が勃興する契機となります。
出典: Wikipedia (ワーテルローの戦いで指揮を執るウェリントン)
イギリスは、この間、病床の国王ジョージ3世から、これを摂政王太子(プリンスリージェント)として支えたジョージ4世の治世への移行期でしたが、フランスとの戦争を継続し、ヨーロッパ主要国のなかでフランス軍に国土を蹂躙されることなく守り通した唯一の国となりました。
美術や建築様式に関しても、ヨーロッパ大陸で、オーストリアの「ビーダーマイヤー様式」やフランスの「ルイ・フィリップ様式」など、新興市民層に支持されたシンプルで簡素なものに対して、
イギリスでは、ギリシア・ローマといったヨーロッパ文化のリバイバルである新古典主義、さらに、これに中国やインドの異国趣味を加えたような「リージェンシー様式」といった重厚で威厳を感じさせるものが流行していた時代にあたります。
ちなみに、創業者のジョン・ドルトン(John Doulton、1793–1873)が、ビジネスパートナーであるジョン・ワット(John Watts)、マーサ・ジョーンズ(Martha Jones)とロイヤルドルトンを創業した当時は、素朴で重厚な炻器(せっき、陶器と磁器の中間のような性質を持ち、光も水も通さない硬く引き締まった風合いが特徴)で、ビールのピッチャーや水差しなどの日用品を作っていたようです。
可愛らしいけどもちょっと地味な印象も受けますが、これが当時の流行だったんですね。
産業革命の流れに乗り、大いなる飛躍を遂げる
二代目ヘンリー・ドルトン(Henry Doulton、1820-1897)の代になると、ドルトンは大企業への飛躍を始めます。
出典: doulton.org (ヘンリー・ドルトン)
ヘンリー・ドルトンは、創業者ジョン・ドルトンの8人いる子供のうち第2子ですが、もともと学究肌の文学青年であったこともあり、もっとも家業の陶器屋になじまない子供、という評価であったそうですから、人生というのはどう転ぶかわからないものです。
ヘンリー・ドルトンは、様々な実験的な試みを行い、エナメル陶器の開発に取り組んだり、当時のイギリスで起こった産業革命の成果のひとつである蒸気機関をいち早く轆轤(ろくろ)に応用し、工場の生産効率を劇的に改善させるなどしました。
また、産業革命の起こった18世紀半ばから19世紀にかけて、農村部から都市部へ急速な人口の流入がおこった結果、人口と産業の過密化により住宅環境や公衆衛生が急速に悪化しており、ロンドンで需要の高かった排水設備や洗面器、便器などの衛生用品を製品化し、海外へ輸出も行うなど企業として大成功を収めます。
出典: twyfordshistory.blogspot.co.uk (キッチンシンクの広告)
大量生産するメーカーから高級路線へ
この大成功にも安住することなく、1870年頃からは、ロイヤルドルトンはそれまでの大量生産品から高級路線へと舵を切ります。
まずは、ランベス美術学校(現 City and Guilds of London Art School )の生徒の技術を活かして、“アート・ポッタリー”の製作を開始し、いわゆる「作家もの」の陶器の概念を生み出します。
そして、1877年、ヘンリー・ドルトンは、イギリスの陶器の聖地ストーク・オン・トレント(Stoke-on-Trent)にある街バーズレム(Burslem)へと生産拠点を移し、ボーンチャイナを導入し、1点物の高級テーブルウェアの生産を始めたのです。
出典: twyfordshistory.blogspot.co.uk (バーズレム工場)
ボーンチャイナとは牛骨の灰を混ぜて作られる磁器で、乳白色のなめらかな風合いとガラスのような質感が特徴です。
一般的な磁器よりも低温で2次焼成することから、高温で退色する顔料でも色あせることなく繊細な表現が行えます。
これら新たな挑戦が認められ、ヘンリー・ドルトン自身は、1887年にヴィクトリア女王から陶磁器界で初の「ナイト」の称号を与えられます。
出典:Wikipedia(ヴィクトリア女王)
さらに会社としても、1901年、エドワード7世より「ロイヤル」の称号を賜り、ドルトンは「ロイヤルドルトン」へと大出世を果たしました。
現在は、ウェッジウッドなどとともに「フィスカース」グループに
その後も成長を遂げたロイヤル・ドルトンですが、1971年にはイギリスのテーブルウェアブランドをいくつも抱えるコングロマリット「ピアーソン(Pearson)」グループに買収され、ロイヤルドルトンの下に、ミントン(Minton)、ロイヤルアルバート(Royal Albert)、ロイヤルクラウンダービー(Royal Crown Derby)などのブランドが集約されます。
さらに、ロイヤル・ドルトンは、1993年にウェッジウッド(Wedgewood)、ウォーターフォード(Waterford)を擁する「WWRDホールディングス」に買収され、
そのWWRDも、2015年7月には、アラビア(Arabia)、イッタラ(iittala)、ロイヤルコペンハーゲン(Royal Copenhagen)、ロールストランド(Rorstrand)などの有名ブランドを所有するフィンランドの老舗企業グループ「フィスカース(Fiskars)」に買収されて、現在に至っています。
時代に合わせて進化を遂げるロイヤルドルトンのシリーズの数々
その歴史からもわかるとおり、ロイヤルドルトンは時代の流れを掴むことに優れており、現在も世の中のニーズに合わせて、様々なアーティストとコラボレーションしたテーブルウェアを、次々に世に送り出しています。
今回、現代的でハイセンスなシリーズをご紹介します。 白磁の乳白色のキャンパスに、上品かつモダンに時代を落とし込むロイヤルドルトン。その現代的な魅力をぜひ一度、お手に取ってご覧になってみてください。
1)ロンドンコーリング(London Calling)
ロンドンを拠点に活躍するテキスタイルデザイナー、シャーリーン・ミューレン(Charlene Mullen)とのコラボレーションで生まれたこちらのシリーズ。
ロンドンコーリングとの命名通り、ロンドンの街並みが語り掛けてくるかのような現代的デザインです。
バッキンガム宮殿、ロンドン塔、ロンドン・アイなどの有名ランドマークがモノトーンであしらわれ、ちょっとしたアクセントとして小さなバスやヘリコプターなどが赤で表現されており、プレートを並べてみるとロンドンの街並みが広がっているかのような、ユニークな仕掛けが施されています。
モノトーンのモチーフに遊び心が詰まった、魅力的なシリーズです。
出典: Royal Doulton公式サイト (ロンドンコーリング)
出典:Royal Doulton公式サイト (ロンドンコーリング)
2)フェイブル(Fable)
ロンドンのイラストレーター、キャロライン・シュノール(Karolin Schnoor)とのコラボレーションモデル、フェイブル。
北欧の歴史や自然、子供向けの民話の絵本にインスパイアされて作られたシリーズです。毎日使っても飽きのこない、温かみのあるデザインが魅力です。
普段の食卓に自然と溶け込むような使いやすさが、ロイヤルドルトンらしい気品を感じさせます。
出典: Royal Doulton公式サイト (フェイブル)
3)パステル(Pastels)
その名のとおり、優しいパステルカラーの「パステル」シリーズ。職人技が織りなす繊細で美しい版画からインスピレーションを得てデザインされています。
淡く優しいカラーリングと繊細なプリントが主張しすぎず、かしこまった場面というよりも、友達とのブランチのようなカジュアルな場面で、お料理を引き立てるテーブルウェアとしてもってこいです。
お好みのパステルカラーで食卓を彩ってみてはいかがでしょう。
出典: Royal Doulton公式サイト (パステル)
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