町中に陶器があふれる街:ラ・ビスバル・デ・アンポルダ
バルセロナの喧騒を離れ、車で1時間40分ほど北上し、少し内陸に入ったところにラ・ビスバル・デ・アンポルダ(La Bisbal d’Empordà、以下ラ・ビスバル)の街はあります。
バルセロナから北上する海岸線は、夏、欧州各地から海水浴客が集まるバルセロナ市内のビーチとは違って、ゆったりとしていて、透き通った海を満喫できると地元の人には評判です。
ラ・ビスバルに着いて、まず目に飛び込んでくるのは、色鮮やかな、しかし素朴な陶器です。
この辺りの陶器はアラブの文化の影響を強く受けた南スペインのものとは違い、地中海を経由してやってきたギリシャの文化の影響を強く受けているそうです。
もちろんフランス国境にも近いので、フランスやイタリアの影響も受けていることは間違いなさそうです。
18世紀後半には陶器作りは街の重要な産業となっていましたが、陶器作成の記録が初めて歴史に現れたのは1511年のことでした。
その後1899年には陶器制作の仕事を守るための団体(Unió Obrera de Ceramistes)が出来るなど、街がどれほど陶器を大切にしていたのか容易に想像できると思います。
街のメイン通り(Aigüeta)にはずらりと陶器のお店が並んでいます。
それらのお店では少しでも多くの人にラ・ビスバルの陶器の良さを知ってもらう目的で、陶器制作を体験を実施しているところも有ります。
またラ・ビスバル陶器のブランド名を世に広げるに際して、自分たちの技術を守るために伝統的な手法で作られた陶器には2010年よりこのようなマークが付けられています。
市内には8000点もの作品を常設するだけでなく、陶器の制作過程や道具などが見られる素焼き陶器博物館(Terracotta Museo de Cerámica)もあります。
出典:Generalitat de Catalunya (素焼き陶器博物館)
中世に迷いこんだ街:ジローナ
海に近いラ・ビスバルから、内陸に電車で1時間ほど行けば、雰囲気は一転、ジローナ県の県都で中世の雰囲気いっぱいのジローナ(Girona)にたどり着きます。
こちらも陶器の街として有名で、色とりどりの陶器がお店に並びます。
ジローナは、カタルーニャ州の都市の中でも、最も重要な街の1つで、人口はおよそ10万人です。
地元のサッカーチーム、ジローナFCに日本人の指宿選手が長年在籍していたので、街の名前を知っている人も多いかもしれません。
駅を出て、街の中心までは徒歩で10分程です。街の中心を流れるオニャル川(Onyar)沿いの景色が非常に趣き深いです。
出典:depositphotos.com(オニャル川沿い)
そしてオニャル川にかかる橋は何本も有りますが、特に有名なのこの橋です。
何の変哲もなさそうな赤い橋は「鉄の橋」(Puente de Hierro)、通称「エッフェル橋」と呼ばれています。
そうです、パリにあるエッフェル塔の建設者アレクサンドル・ギュスターヴ・エッフェル(Alexandre Gustave Eiffel)によって1877年に作られた橋なのです。
天気が良い日にはこの鉄の橋の上から見る川に写った鮮やかな色の建物の眺めは最高です。
この橋を渡ると、そこは旧市街。一気に中世にタイムスリップです。
この地に最初に住み着いたのはイベリア人でした。その後ローマ人がやってきて、ジローナの元となるゲルンダ(Gerunda)を築きました。
しかしローマ人が去ると、街は次第に廃れてゆき、イスラム教徒が侵攻して来ました。
ところが中世に入ると、カロリング朝がこの地をアラブ人から奪還します。イスラム教徒を追い出したジローナにはユダヤ人も入植してきて、ヨーロッパ有数のゲットーが作られます。
15世紀から17世紀にかけジローナは成長し続け、市民は都市を守る城壁の小さな増幅、及び改良を実行してゆきました。
17世紀から18世紀にはヨーロッパ中で起こった数多くの戦争のため、フランス軍との最前線の地となりました。
数世紀に渡って色々な文化の入り乱れたこの街の見どころの一つは旧市街(ユダヤ人街)を抜け、カテドラル脇の道を上って行ったところにある、「アラブ人浴場(Banys Àrabs)」です。
1194年にお風呂好きだったアラブ人が作った、ロマネスク様式の非常に保存状態の良い浴場です。春祭りの時は鮮やかな花々で豪華に飾り付けが施されるそうです。
出典:AJUNTAMENT DE GIRONA(アラブ人浴場)
そしてもう1つは、ジローナを訪れる人の多くがこれを見るためにやってくると思われる、カテドラル(Catedral de Girona)にある「天地創造のタペストリー(Tapís de la Creació)」です。
街で最も高い場所、90段の階段の上に建つバロック調のファサードが美しいこのカテドラルは、700年という長い歳月かかって建設されたため、内部はゴシック様式です。
そしてこのカテドラルの宝物館にヨーロッパ最古の刺繍の1つ、「天地創造のタペストリー」が収められているのです。
11世紀4.15m x 3.65mの大きな麻布に旧約聖書の一番初めの部分「創世記」がウールの糸で刺繍されたもので、ロマネスクの至宝とも呼ばれています。
出典:Wikipedia(天地創造のタペストリー)