出典:アラビア本国公式サイト
「厳選した良いものを買って、長く使いたい」「シンプルかつおしゃれ。大好きなものに囲まれて暮らしたい」―多くの人が感じていることかもしれませんね。
そんな方には北欧フィンランドの「アラビア」をオススメします!
フィンランドで最も愛されているブランドの1つである「アラビア」。その卓越したデザインや機能性はもちろんのこと、リサイクルやまだ使える古い食器の買取など、環境や社会に対し責任を果たそうというポリシーをもつブランドでもあります。
今回は、日本ではまだあまり知られていない「アラビア」に関する豆知識と、人気シリーズを紹介します。これを読めば、「アラビア」のことがもっと好きになりますよ!
北欧フィンランドの長い冬と大自然の中で育まれた温かみのある食器
アラビアは北欧フィンランドで最も有名で、かつ最も愛されているブランドの1つ。
1873年の創業以来、140年以上にわたってフィンランドの毎日の食卓はもちろん、パーティーやお祝いのシーンなどでも彩りを添えてきました。
森と湖に囲まれた大自然の中で、長い冬とうまくつきあいながら暮らしてきたフィンランドの人々。家で過ごす時間が長いからこそ、インテリアや食器は美しく、実用的で丈夫なものを。
そういう生活の知恵から生まれたアラビアのテーブルウエアは親から子へ、子から孫へ世代や時を超えて受け継がれています。
ヨーロッパでも古い歴史をもつ名窯「ロールストランド」の工場として出発
出典:アラビア本国公式サイト(1880年代のアラビアの工房の様子)
日本ではイッタラと並んで人気のアラビア。140年もの歴史の中にはいいときもあれば、そうでないときもあったようです。
日本ではあまり知られていない歴史を少し覗いてみましょう。
アラビアは1873年、フィンランドの首都ヘルシンキ郊外のアラビア地区で創業されました。お分かりのように、アラビアというブランド名はこの地区に由来するものです。
アラビアは当初、隣国スウェーデンの「ロールストランド」の製陶所として出発しました。
ロールストランドは1726年に創業し、ドイツのマイセン、オーストリアのアウガルテン等と並んで長い歴史をもち、ノーベル賞受賞式後の晩餐会でも同社の食器が使われるほどの伝統のある窯。
なぜ、スウェーデンの窯がわざわざ隣国フィンランドに工場を作ったのでしょうか。それにはフィンランドの歴史が関係していました。
出典:外務省(フィンランド共和国、ピンクの部分がフィンランド)
ロールストランドは、かねてよりロシア市場に進出したいと考えていましたが、高い税金がネックとなっていました。
しかし、アラビアの創業当時は好景気であったこと、また、当時はフィンランドがロシア統治であったことから、より安い税金で製品を輸出できることも後押しとなり、フィンランドに工場を作ることにしたといいます。
数年後には、フィンランドにおける陶磁器生産数の約半数をアラビアが占めるまでに成長しました。
さて、ここで質問です。当時はどんな食器を作っていたと思いますか?
現在のような、シンプルな北欧デザインのもの?それとも、貴婦人が使うようなティーカップ?
どちらも違います。実は創業当時はイギリスやドイツ、フランスの窯にも多くみられる花柄のブルー&ホワイトの皿や
出典:アラビア本国公式サイト(Our history 1880)
シノワズリ(中国趣味)のカップも作っていたのです!どちらも今のアラビアのアイテムとはだいぶ、テイストが違っていて興味深いですね。
出典:アラビア本国公式サイト(Our history 1880)
その後もアラビアの成長は続きます。1900年にパリで開催された万国博覧会で、フランスのジアンと並んで金賞を受賞したのを皮切りに、テーブルウエアだけでなく、花瓶やタイルストーブなどの生産もスタート。
出典:アラビア本国公式サイト(Our history 1900)
1900年代初頭の厳しい不況の中でも売り上げを伸ばしていきました。
そして、1910年、ついに親会社であるロールストランドから完全に独立し、フィンランドを代表するブランドとしてさらに勢いづいていきました。
「美しさ」と「機能性」の源流―「美術部門」と「プロダクト・デザイン部門」
出典:アラビア本国公式サイト(Our history 1940)
1917年、フィンランドはロシアからの独立を果たします。
自国のアイデンティティを取り戻し、フィンランドならではの美や芸術を追求するためにアラビアは「美術部門(Art Department)」を設置。優れたデザイナーや芸術家をスカウトし、自由度の高い制作をサポートしました。
さらに1945年には「フィンランド・デザインの巨匠」と呼ばれるカイ・フランクを主任デザイナーとして迎え、「プロダクト・デザイン部門」も設けました。
カイ・フランクは、現在も世界的なロングセラーであるキルタ(Kilta)シリーズ(その後、改良を重ね、現在は同じグループ会社のイッタラ「ティーマ(Teema)」シリーズとして販売)を生み出したプロダクト・デザイナー。
出典:イッタラ本国公式サイト(ティーマ)
カイ・フランクは、シンプルな日常美を追求したことから「フィンランド・デザインの良心」とも呼ばれています。
シンプルな中に美しさがあり、かつ丈夫で実用的なアラビアの食器は、この2つの部門なくして生まれなかったのかもしれませんね。
出典:アラビア本国公式サイト
盤石なデザインのベースをもったこともあり、1951年、1954年、1957年、と1950年代には続けてミラノ・トリエンナーレ(イタリアのミラノで開催される美術展覧会)で数えきれないほどの賞を獲得します。
そしていよいよ、1969年には現在も世界的に人気のシリーズ「パラティッシ」シリーズを発表。これはいまや、アラビアのデザイン・アイコンといっても過言ではありません。
出典:アラビア本国公式サイト(Our history 1960)
そして1984年、アラビアはついに、かつての親会社であるロールストランドを傘下に収めるほどに成長したのです。親会社と子会社というかつての立場が逆転したのです。
日本ではあまり知られていない!? アラビアにまつわる3つの豆知識
出典:アラビア本国公式サイト(Our history 1960)
アラビアの本国公式ウェブサイトを覗いてみると、その歴史から製品情報、Q&Aに至るまで実に多くのことを積極的に発信していることに驚かされます。
私は記事を書くために、いろいろな食器ブランドの本国公式ウェブサイトを見ていますが、自社の歴史や製品情報について事細かに書いているサイトは意外に少ないのです。
ここでは、私がアラビアの本国公式ウェブサイトを調べて、へえ!と思った3つの「知られざる!?豆知識」をお届けします。
知られざる!?豆知識1)もう使わないアラビアの食器をアラビア本体が買い取る「ヴィンテージ・サービス」がある
出典:アラビア本国公式サイト(ヴィンテージ・サービス)
とてもいい取り組みだけど、これは残念ながら、フィンランド国内限定の話です!
ヴィンテージ・サービスとは、比較的状態がよいけれど、もう使わなくなったアラビアの食器をフィンランド国内の店舗(一部)に持ち込めば、状態に応じて買い取ってくれる制度。買い取り後は、ヴィンテージ商品として販売されます。
これが好評なのです。というのも、生産が終了したシリーズは割れたり、追加でほしいと思ったりしても買い足せませんが、ヴィンテージ食器の中からなら買い足すことができるかもしれないのですから。
壊れたり、状態が悪かったりするものは、買い取りはされませんが、無料で引き取ってくれます。その後、陶磁器はレンガの材料に、ガラス製品は建物の断熱材などにリサイクルしてくれるそうです。
驚くべきことに、買い取りができない状態のものはアラビア製品だけでなく、他社製品でも引き取ってリサイクルしてくれます。
今、話題になっている「持続可能な社会」の実現や、国連で合意された「SDGs(持続可能な開発目標)」に一企業としても率先して参画しているところがすばらしいですよね。
知られざる!?豆知識2)本当に顧客が聞いてみたいQ&Aをホームページに載せている
出典:アラビア本国公式サイト(Our history 1960)
企業のホームページ上のQ&Aには、顧客として本当に聞きたいことって案外載ってないことが多いと思いませんか?
アラビアは違います。
例えば「一番売れたコーヒーカップは何?」「アラビアとフィスカース(現在の親会社)はどういう関係性なの?」など、普通なら企業としてあまり載せないような質問を掲載し、それに対して回答しています。
本国公式ウェブサイトによると、「これまで一番売れたコーヒーカップ」は、「ルスカ」という茶色のシンプルなシリーズのもの(上記写真)。
残念ながら、現在は生産していません。現在のラインナップで一番売れているコーヒーカップだと、ころんとしたフォルムが可愛らしい「アークティカ」シリーズだそうです!
出典:アラビア本国公式サイト
知られざる!?豆知識3)実はもう、フィンランド国内では生産していない
出典:アラビア本国公式サイト(Our history 2010)
私が一番驚いたのは、この事実を自社ブランドのホームページのQ&Aにきちんと掲載していること。きっと問い合わせも多いのでしょうが、自らQ&Aに質問を掲載して回答しているなんて、誠実な会社だと思いませんか?
2000年代に入ると、アラビアに限らず、ものづくりの会社にとって厳しい時代に入りました。2007年の世界金融危機やアジアの安い労働力による陶磁器生産の増加といった、世界経済やグローバル化の波に影響を受けたのです。
アラビアも例外ではありませんでした。2016年にフィンランドの工場を閉鎖し、すべての製造を海外に移しました。現在、アラビアの製品は、主にタイとルーマニアにおいて、信頼を寄せるパートナー企業の工場で生産されています。
フィンランドの工場閉鎖に伴って、現地での工場見学やアウトレットはなくなった代わりに、デザインの発信基地である「イッタラ・アラビア・デザインセンター」がオープンしました。
あなたはどのタイプ?アラビアの5大人気シリーズを一挙、紹介!
長らくお待たせいたしました!今回は本題に入るまでが長かったですね。
それでは、アラビアの数あるシリーズの中から、タイプ別に5大人気シリーズを紹介します。あなたはどのタイプに一番当てはまりますか?
1)アラビアと言えばこれ!という代表作がほしいあなたに「パラティッシ」(Paratiisi)
出典:アラビア本国公式サイト(パラティッシ)
せっかくなら、北欧らしい食器がほしい!と思っているあなたには、先に紹介した「パラティッシ(Paratiisi)」シリーズがおすすめ!
「パラティッシ」とは英語では「パラダイス」、つまり「楽園」という意味です。
フィンランドの陶芸家ビルガー・カイピアイネンにより、1969年に発表されました。パンジーやカシス、ぶどうやリンゴなど瑞々しい花や果物が大胆、そして力強くあしらわれています。
ビルガーは約50年もの長い間、アラビアの美術部門で活躍した人物。「フィンランド陶芸界のプリンス」と呼ばれ、普段は1点もののアート作品を制作していたそう。
そんな彼が作った数少ない量産品がこの「パラティッシ」なのです。1点ものを手に入れるのはちょっと難しいけれど、この「パラティッシ」なら巨匠のデザインに触れることができるのです!
「パラティッシ」シリーズは色のバリエーションが3種類あります。
1つめは、黄色と青のコントラストが若々しい印象を放つ、スタンダードなもの。
出典:アラビア本国公式サイト(パラティッシ)
2つめは、モノトーンがシックな印象の「パラティッシ・ブラック」。他の皿との組み合わせがしやすいのが特徴です。
出典:アラビア本国公式サイト(パラティッシ・ブラック)
3つめは、パープルとオリーブ色の組み合わせが新しい「パラティッシ・パープル」。2012年に老舗百貨店ストックマンの150周年を記念して作られたラインです。あなたのおうちの食卓には、どれが一番合いそうですか?
出典:アラビア本国公式サイト(パラティッシ・パープル)
この商品をストアで見る→パラティッシ
2)北欧らしい、シンプルで合わせやすいデザインが好きなあなたに「24h トゥオキオ」(24h Tuokio)
出典:アラビア本国公式サイト(24h トゥオキオ)
藍色でさっと描いたような手書き風の絵柄がきりっとした印象を与える「24h トゥオキオ」シリーズ。このデザインには、3人のデザイナーが関わっています。
数々の賞を受賞しているデザイナー「ヘイッキ・オルヴォラ」が「いつ、どんな時も使える」というコンセプトをもとにした「24h」シリーズをベースに、2人の男性デザイナー「ヘロリンネ&カッリオ」が現代のエスプリを加えました。
シリーズ名「トゥオキオ(Tuokio)」とは、フィンランド語で「瞬間、一瞬」を意味します。朝、昼、ティータイム、夕食の24時間いつでも使いやすいデザインですが、「一瞬、瞬間」という名前のとおり、特別な瞬間にも使いやすそうですね。
出典:アラビア本国公式サイト(24h トゥオキオ)
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3)フィンランドといえばこれ!という北欧ラブあなたに「ムーミン」(Moomin)シリーズ
出典:アラビア本国公式サイト(ムーミン)
2019年3月、埼玉県飯能市に「ムーミンバレーパーク」がオープンし、さらに人気が高まっているムーミン。
ご存知の方も多いと思いますが、ムーミンはフィンランドが誇るお話。そのお膝元のアラビアはその魅力を余すところなく、マグカップやプレートにこめています。
このムーミンシリーズの特徴は3つあります。
1つめは、ムーミンシリーズは巨匠カイ・フランクがデザインした「ティーマ」シリーズで作られていること!使いやすさは言わずもがな、ですね。
2つめは、アイテムもバラエティ豊かなこと。マグカップはもちろんのこと、プレートやボウル、グラスタンブラーやカトラリーやフィギュアなんかもそろっています。
3つめは、ムーミン谷のキャラクターも幅広くそろっていること!ムーミンママ、ムーミンパパ、スナフキンやミイだけではありませんよ。だから、きっとあなたのお気に入りが見つかるはずです!
本国公式サイトによると、ムーミンシリーズの中には3つのカテゴリがあります。
まずは、スタンダードな「ムーミン・クラシックシリーズ」からご紹介。
出典:アラビア本国公式サイト(ムーミン・クラシック)
いつまでも飽きがこない、シンプルさや愛らしさがいいですね。
次は「ムーミン・スペシャルシリーズ」。
出典:アラビア本国公式サイト(ムーミン・スペシャル)
出典:アラビア本国公式サイト(ムーミン・スペシャル)
クラシックシリーズよりも、少しシックな色合いだったり、グラスタンブラーに描かれたキュートなしぐさだったり、水彩画のようなタッチの違う絵柄だったりと、バラエティ豊かなムーミンたちに出会えるシリーズです。
最後は「限定シリーズ」。
夏と冬の年2回しか発売されず、発売期間も限られているので、特に人気です。上記の写真は、2019年10月1日に発売される限定シリーズ!(本国公式サイトより)。これからの季節にぴったりですね。
4)映画「かもめ食堂」のような世界観に憧れるあなたに「24h アベック」(24h Avec)
出典:アラビア本国公式サイト(24h アベック)
2006年に公開され、北欧人気に火をつけた映画「かもめ食堂」。フィンランドのカフェを舞台にしたこの映画の中で使われ、人気になった食器が「24h アベック」シリーズです。
出典: amazon.co.jp(かもめ食堂)
出典:アラビア本国公式サイト(24h アベック)
和食器のような雰囲気なので、和洋中なんでも合わせやすいのです。それだけでなく、盛りつけると料理がさらにおいしそうに見えるから不思議!1枚もっていると便利な食器です。色は青のほかに、パープルがあります。
出典:アラビア本国公式サイト(24h アベック)
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5)どこか懐かしいパターンが好きなあなたに「エステリ」(Esteri)
出典:アラビア本国公式サイト(エステリ)
最後にご紹介するのは、1973年にアラビア社100周年を記念してエステリ・トムラが発表した「エステリ」シリーズ。
出典:アラビア本国公式サイト(エステリ)
その後、廃盤になりましたが、2017年のフィンランド独立100周年の節目に復刻しました。どこか懐かしいけど、北欧らしいスタイリッシュさもあわせもつこのシリーズは、毎日の暮らしに彩りを添えてくれそうです。
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いかがでしたか?
アラビアは日本国内に直営店やアウトレットがあります。ぜひお近くの店舗で北欧デザインとものづくりの心意気に触れてくださいね!
出典:アラビア本国公式サイト
この商品をストアで見る→アラビア
参考資料
This is FINLAND(Produced by the Ministry for Foreign Affairs, Department for Communications)- FREE TO EXPLORE FINLAND’S GREAT OUTDOORS (English) ※フィンランド外務省によるフィンランドの発信サイト
「器の教科書」(マガジンハウス)