ルネサンスを花開かせた教皇の街
「母をたずねて三千里」というアニメを覚えていますか?
少年マルコが母を探して船旅に出た港、あれはイタリア、リグーリア州の首都ジェノバ(Genova)だったのですが、そのジェノバから電車でおよそ1時間、港町サヴォーナ(Savona)に到着です。
出典:Wikipedia(サヴォーナ)
ジェノバほどの規模ではありませんが、サヴォーナも大型客船が停泊出来る大きな港を持っています。
この街で一番の有名人は多分この方ではないでしょうか?
メロッツォ・ダ・フォルリ(Melozzo da Forlì)が1447年頃に描いたこの肖像画(ヴァチカン美術館所蔵)の主人公は、フランチェスコ・デッラ・ローヴェレ(Francesco della Rovere)。
出典:Wikipedia(「SixtusⅣ」 Melozzo da Forlì )
のちにミケランジェロ(Michelangelo)が壁画で埋め尽くすことになる世界一美しい礼拝堂、「システィーナ礼拝堂(Cappella Sistina)」を作った教皇シクストゥス4世(Sixtus IV)その人です。
故郷のサヴォーナには彼の両親の墓を安置した“システィーナ礼拝堂”が有ります。
出典:cattedralesavona.it(システィーナ礼拝堂 、サヴォーナ)
1489年建てられたこちらの礼拝堂はもちろんミケランジェロとは関係がなく、建設当初は美しいフレスコ画で覆われていましたが、現在当時のものは一部しか残っておらず、ロココ風の化粧漆喰とフレスコ画で装飾し直されています。
地方の貧しい貴族だったデッラ・ローヴェレ家(Della Rovere)を名家の1つに押し上げたのはシクストゥス4世とその甥でした。
甥はローマにルネサンス芸術の最盛期をもたらした人物、ミケランジェロにシスティーナ礼拝堂を、ラファエロ(Rafaello)にヴァチカン宮殿の装飾を依頼したジュリアーノ・デッラ・ローヴェレ(Giuliano della Rovere)のちのユリウス2世(Giulio II)です。
出典:Wikipedia(ユリウス2世)
ローマに最高のルネサンス美術を花開かせた立役者の2人はローマから400キロ以上も離れたこの港町の出身だったのです。
サヴォーナ陶磁器美術館(Museo della ceramica di Savona)
現在サヴォーナの旧市街にある、元は1479年シクストゥス4世によって建てられたMonte di Pietà(モンテ・ディ・ピエタ。儲けを目的としない質店)を改築したガヴォッティ宮(Palazzo Gavotti)。
これには現在、市立絵画館(Pinacoteca civica)とサヴォーナ陶磁器美術館(Museo della ceramica di Savona)が入っています。
古いフレスコ画も残る館内は、2014年に修復を終えたばかりで非常に明るく、最新の展示方法によって15世紀から現在に至るリグーリア州を中心とした陶磁器の変遷を見ることができます。
出典: http://musa.savona.it(サヴォーナ陶磁器美術館)
合計1000点以上にわたる素晴らしいコレクションを4つのフロアに、時代やタイプに分けて展示しています。
展示は2階から始まります。一番最初に目に入ってくるのは、非常に貴重なエウロペの略奪(Il ratto di Europa 、1721)。
出典: http://musa.savona.it(エウロペの略奪)
この受け皿はジョ・アゴスティーノ・ラッティ(Gio Agostino Ratti)という画家のサインと製作日の入った非常に貴重な作品で、17世紀のリグーリア州のマヨリカ焼きのレベルの高さを知ることができます。
隣の部屋には重要なバロックの歴史ものが続き、その先にはカヴァンナ(Cavanna)という町の薬局で使われていた陶器のコレクションがあります。
出典:https://wabbey.net(サヴォーナ陶磁器美術館)
隣の部屋には最新のガラスの棚を使用して、17世紀のサヴォーナのアーティストの作品が集められています。
出典:https://wabbey.net(サヴォーナ陶磁器美術館)
2階で16世紀、17世紀の陶器コレクションを見た後は、3階に向かいます。
3階には20世紀の最初の20年間に言及したサヴォーナやアルビッソラ(Albisola)で活躍した陶芸家の作品が展示されています。この時代の作品からは19世紀初頭に隆盛した装飾芸術、アール・デコや合理主義、未来派などの強い影響が見られます。
また19世紀後半に活躍したアーティストの作品も展示されています。
そのまま4階に上がると、ミケランジェロ・ピストレット(Michelangelo Pistoletto)、エイドリアン・パーチ( Adrian Paci)、ヨナ・フリードマン( Yona Friedman)、ウーゴ・ラ・ピエトラ( Ugo La Pietra)、アレッサンドロ・メンディーニ( Alessandro Mendini)、アンドレア・ブランズィ( Andrea Branzi)などの国際的に有名なデザイナーの作品が30点以上展示されています。
出典:https://wabbey.net(サヴォーナ陶磁器美術館)
出典:https://wabbey.net(サヴォーナ陶磁器美術館)
そして最後は1階です。1階には主に宗教的な作品が展示されています。
更に最後は最新の技術を駆使して作られたリグーリアの陶器の歴史をまとめたビデオを見ることができます。
サヴォーナ陶磁器美術館(Museo della ceramica di Savona)
水・木10.00 – 13.30
金・土10.00 – 13.30、15.30 – 18.30
日10.30 – 17.00
月曜・火曜 休館
コカ・コーラに似た炭酸飲料
イタリアには見た目がコカ・コーラにそっくりな炭酸飲料があります。
出典:sanpellegrinofruitbeverages.com(Chinò)
実はこれ、その名前から1500年末から1600年初めに中国からサヴォーナに持ち込まれたといわれている柑橘類の1つキノット(Chinotto)から出来ています。
実は小さく苦く、ジュース、食後酒の原料となる他、砂糖漬けに加工されて食べられています。
炭酸水のサンペレグリノ社が作り出したキーノ(Chinò)は世界中のイタリア系移民街でも見られるように、イタリア人のソウルドリンクのようです。
見た目はコカ・コーラにそっくり、でも炭酸水とほろ苦い柑橘(現在はシチリア産のキノットを使用しているようです)を合わせたものなので、全然味は違うのでご注意を!
参考資料
Museo della ceramica di Savona