出典:イッタラ本国公式サイト
「うちにある他の食器とも合わせやすいものがほしい」「いつも、いつまでも使いたいから、おしゃれでかつ、丈夫な食器がほしい」―そうお思いの方もいらっしゃるかもしれませんね。
他の食器と組み合わせしやすくて、おしゃれで、丈夫な食器。
一見、わがままに思える願いですが、大丈夫!これらの望みをまとめて叶えてくれる食器ブランドがあるんです。
それは北欧フィンランドの「イッタラ」。
イッタラが「美しいデザイン」と「実用性」を両立させている背景には、独自の「哲学」がありました。
今回は、イッタラの名を世界にとどろかせた有名デザイナーの人気シリーズだけでなく、日本ではまだあまり知られていない、イッタラの社会や環境に対する「先進的な取り組み」についても紹介します。これを読めば、もう、あなたはイッタラ通ですよ!
「アラビア」と「イッタラ」は似てるイメージがあるけど、違いは何だと思う?
出典:イッタラ本国公式サイト(ティーマ)
アラビアとイッタラはともに北欧フィンランド発のブランドであること、また、どちらもフィスカース社傘下のグループ会社であることから、2つのブランドの違いがわかりにくいと思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
恥ずかしながら、実は私もつい最近まで、違いをよくわかっていなかった一人でした(だからこそ、入念に調べました!)。
あなたはこの2つのブランドの違いはどこだと思いますか?皿の絵柄?デザインや色?
入念に調べてみた結果から私が考える一番大きな違いは「創業の歴史」。
アラビアは「陶磁器の工房として創業」しているのに対し、イッタラは「ガラス工房として創業」しています。違いはそんな小さなこと?と思うかもしれませんね。
しかし、「小さなガラス工房から始まった」というイッタラのアイデンティティは、現在のラインナップや会社としての取り組みに大きな影響を与えています。イッタラの歴史を少しひもといてみましょう。
北欧フィンランドの「イッタラ村」でガラス工房として産声を上げた
出典:イッタラ本国公式サイト
イッタラは、アラビア創業の8年後となる1881年、フィンランドの小さな「イッタラ村」でP・M・アブラハムソンによって創業されました。
始めの頃は家庭用のグラスのほかに、薬品などの瓶やオイルランプ用のガラス製品を作っていたそうです。
その後、20世紀に入ると、イッタラは新しいデザインを求めて改革し、これまでにない発想でものづくりを始めたことによってガラス工業におけるパイオニア的存在になっていきます。
モダニズムやファンクショナリズム(機能主義)の思想をベースにした「美しさと機能性の両方をテーブルウェアに込めて、すべての人に届ける」というまったく新しい発想でデザインを始めたのです。
このムーブメントに大きな影響を与えたのは、3人の名だたるデザイナーでした。アイノ・アアルト&アルヴァ・アアルトとカイ・フランクです。
まず、始めに紹介したいのは、デザイナーの「アイノ・アアルト(Aino Aalto)」。
出典:イッタラ本国公式サイト(アイノ・アアルト)
1932年の発表から約90年、イッタラで最も長い歴史を誇る「アイノ・アアルト」シリーズを生み出したデザイナーです。
出典:イッタラ本国公式サイト(アイノ・アアルト)
二人目に紹介する功労者は、「アイノ・アアルト」の夫である「アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)」。
出典:イッタラ本国公式サイト(アルバ・アアルト)
フィンランドが生んだ20世紀を代表する建築家であり、デザイナー。彼が1936年に発表したのは、世界で最も有名なガラス製品の一つと言われている花瓶です。
出典:イッタラ本国公式サイト(アルバ・アアルト)
最後に紹介する功労者は、巨匠「カイ・フランク(Kaj Franck))」。彼は、同じくフィンランドを代表する食器ブランドであるアラビアの主任デザイナーであったことでも有名です。
出典:イッタラ本国公式サイト(カイ・フランク)
また、イッタラの中でも大人気シリーズとなった「ティーマ (Teema)」のデザイナーでもあります!
出典:イッタラ本国公式サイト(ティーマ)
彼は「フィンランド・デザインの良心」と呼ばれ、その人気は2011年に彼の生誕100周年を記念して切手とコインが発売されたほど!
出典: postio marche
今もなお変わることのない、イッタラのデザインに対するポリシーを作り上げた3人。この3人が現在のイッタラを作り上げたといっても過言ではありません。
アアルトシリーズやティーマだけじゃない!イッタラのさらなる代表作3選
出典:イッタラ本国公式サイト
その後、第二次世界大戦前後で一時的に生産がストップしてしまいますが、その後再開し、ガラス製品だけでなく、陶磁器や鉄製の作品などの有名シリーズを続けて世に送り出していきます。
本国公式サイトでは、シリーズのカテゴリだけでも50以上あるイッタラ。
発表するものが次々と評価され、代表作に恵まれているので、選ぶのがとても難しいのですが、ここでは先に紹介したアアルト夫妻のシリーズやティーマに加えて、「イッタラと言えば、これも押さえておきたい!」という代表作を3つ紹介します。
1)「サルパネヴァ」(Sarpaneva)
出典:イッタラ本国公式サイト(サルパネヴァ)
北欧デザインを世界に知らしめた「ティモ・サルパネヴァ(Timo Sarpaneva)」も優れたデザインを残しました。
ドイツ・ローゼンタール窯では、フィンランド語で自国そのものを表す意味の「スオミ」というシリーズをデザインしたサルパネヴァ。
イッタラにおいては自身の名前を冠にもつ「サルパネヴァ」シリーズとして1960年に鉄製のキャセロールをリリース(上記写真)。時代を超えた最高傑作と言われています。
ちなみに、赤地に白い「i」が目印のイッタラのロゴマークも彼がデザインしたものなんですよ!
出典:イッタラ本国公式サイト(ティモ・サルパネヴァ)
出典:イッタラ本国公式サイト
2)「ウルティマ・ツーレ」(Ultima Thule)
出典:イッタラ本国公式サイト(ウルティマ・ツーレ)
ガラス製品の代表作は他にもあります!フィンランドの自然にインスピレーションを得てデザインを発想する巨匠「タピオ・ウィルカラ」による後世に残る作品。
それはフィンランド北部ラップランド地方の溶けかかった氷にインスパイヤされたという、1968年発表の「ウルティマ・ツーレ」。そのフォルムはまさに氷に水が滴っているかのよう!
出典:イッタラ本国公式サイト(ウルティマ・ツーレ)
3)「バード・バイ・トイッカ」(Birds by Toikka)
出典:イッタラ本国公式サイト(バード・バイ・トイッカ)
3つ目に紹介するのは、かわいらしい鳥の置物。フィンランドを代表するデザイナーであるオイバ・トイッカ(Oiva Toikka)が「バード・バイ・トイッカ(Birds by Toikka)」シリーズを1972年に発表。
出典:イッタラ本国公式サイト(オイバ・トイッカ)
その卓越した美しさから数々の賞に輝き、世界的に熱狂的なコレクターもいるとか。確かにシリーズで集めると、自然の中と同じように、いろんな種類の鳥がさまざまな表情や色を見せて、家の中が華やぎそうですね。
「未来に『古典』として残るものをデザインする」という哲学
出典:イッタラ本国公式サイト
これまで見てきたように、イッタラは名だたるデザイナーと協業して、優れたデザインのシリーズを生み出し、長きにわたって世界中の人々に愛され続けています。
それはなぜなのでしょうか。
今回、私がイッタラについて調べてみて感じたのは、イッタラのものづくりの背景には「未来に『古典』として残るものをデザインする」という哲学が脈々と受け継がれているからではないかということです。
そう思う理由は、イッタラの本国公式サイトには、以下のような一文があったから。
“What we design must carry the potential to become a future classic.”
出典:iitala official website
―直訳すると「私たちがデザインするものは、未来の『古典』になる可能性を持ち合わせていなければならない」
イッタラのデザインの基本は、「時を超えた美しさ(timeless aesthetics)」、「機能性(functionality)」、そして「高いクオリティ(high quality)」の3つ。
毎日使っても、ずっと使っても飽きが来ないシンプルな「美しさ」と、他の食器とも調和してシーンを選ばない「機能性」を両立させ、長く使ってもらうことを目指しています。
それらを実現することにより、「子どもが生きる世界でも「古きよきもの」として残り続けるものを作りたい」、そんな「哲学」や「思い」が優れたデザインを生み出す源ではないかと思うのです。
さすが、環境先進国北欧のブランド!サステナビリティを考えて、アクションするイッタラ
2015年の国連のサミットの中で、世界のリーダーによって決められた国際社会共通の目標「SDGs (持続可能な開発目標)」が採択され、「持続可能な社会」「サステナビリティ」といったキーワードを目にすることも多いですね。
イッタラは民間企業としての活動だけではなく、CSR(企業の社会的責任)という点でも先頭に立ってアクションを起こしています。その本気度は、イッタラの本国公式サイトに、「サステナビリティ(持続可能性)」という別項目を設けるほど!
この項目で紹介されている取り組みについて、詳しく見ていきましょう。
環境を守るためのアクション
出典:イッタラ本国公式サイト(ヴィンテージ・サービス)
イッタラは自然環境を守るために、実にさまざまな行動を起こしていますが、特筆すべきは、100%リサイクルガラスで作られた限定発売の2019年の新商品!
イギリス生まれでプロダクト・デザインの第一人者であるジャスパー・モリソンによる「ラーミ(Raami)」シリーズの中から生まれました。
出典:イッタラ本国公式サイト(ラーミ)
このグラスはイッタラのガラス工場のリサイクルガラスを100%使って作られており、他の原材料は一切入っていません。
100%リサイクルガラスで製品を作るのは、まだ世界でも珍しいのだそう。
このような製品を作った背景には、リサイクルガラスを使用すれば、原材料はもちろんのこと、原料を加工する際の燃料も減らすことができ、環境への負荷を抑える目的があるとのこと。
環境への配慮もしつつ、クオリティも妥協していません。このタンブラーは新しい原料で作った製品と同じくらい、丈夫で澄んだ高いクオリティのグラスだといいます。
将来的には、リサイクルガラスを使った製品の割合を増やしたいという目標もあるそう。環境にやさしいガラス製品を作るのは、「ガラス工房からスタートした」というアイデンティティもあるかもしれませんね。
このほか、イッタラは北極海の環境保全のために、WWF(世界自然保護基金)と協力して一部の商品(2019年度はシーブルーシリーズ)の売り上げの2.5%を寄付する活動や、
グループ会社のアラビアと同様に、もう使わないイッタラ製食器をイッタラ本体が状態に応じて買い取ってくれる「ヴィンテージ・サービス」も行っています。
このサービスも「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」に貢献するために行っていて、今後はフィンランド国内だけでなく、他の国にも広げていきたいという思いもあるとか。企業として本気でサステナビリティに取り組んでいるのが伝わってきますね。
イッタラのために働くすべての人を守るためのアクション
出典:イッタラ本国公式サイト
イッタラのアクションは、自然環境の分野にとどまりません。「持続可能な社会」の実現という点から、パートナー企業も含め、イッタラのために働く人々の人権や健康を守るための活動もしています。
「イッタラのために働く人々の人権や健康を守ることはイッタラの責任」だとして、例えば、パートナー企業と協業する前にはそこで働く人の人権や健康などを守るための「行動規範」について合意し、必要に応じて監査を行っているそう。
このようなアクションの根底には、「サステナビリティ」「持続可能な社会の実現」という視点だけでなく、平等、幸福、生活のバランスなどを大切にするフィンランドの「豊かな暮らし」という価値観もあるといいます。
どれにするか迷っちゃう!イッタラの5つの人気シリーズを紹介
出典:イッタラ本国公式サイト(カステヘルミ)
ここまで読んでくださった方は、ブランドとしての魅力を知って、ますますイッタラの食器がほしくなったかもしれませんね!大変長らくお待たせいたしました。
それでは、50以上あるシリーズの中で、特に人気のシリーズを5つ紹介します。
1)ガラスの美しさを味わいたい人に「カステヘルミ」(Kastehelmi)
出典:イッタラ本国公式サイト(カステヘルミ)
「ガラス工房」からスタートしたイッタラだからこそ、ガラス製品はおすすめです。
中でも、鳥の置物「バード・バイ・トイッカ」シリーズの「オイバ・トイッカ」がデザインした「カステヘルミ」は1964年に発表されて以来50年以上、愛され続けているシリーズ!
カステヘルミとは、フィンランド語で「露のしずく」という意味。朝日を浴びたパールのネックレスのようにきらめくガラスのしずくは、料理をさらに美しく引き立てます。
シェイプの種類も豊富。シンプルな形のタンブラーだけでなく、ユニバーサル・グラスという、おもてなしにもぴったりなグラスも(下記写真)。
出典:イッタラ本国公式サイト(カステヘルミ)
色も透明なクリアカラーのほかに、赤系、緑系、青系、黄色系、グレーやパープルと種類が豊富なところもいいですね。
出典:イッタラ本国公式サイト(カステヘルミ)
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2)シンプルだけど、おしゃれなものが好きなあなたに「アイノ・アアルト」(Aino Aalto)
出典:イッタラ本国公式サイト(アイノ・アアルト)
冒頭で紹介した「アイノ・アアルト」シリーズ。小石を投げてできる水面の波紋にインスパイヤされて作られました。
連なる水面のパターンは、森と湖の国フィンランドらしさをたたえています。積み重ねて収納できることや時代が変わっても色あせないデザインでも人気。
タンブラーのほかに、深さのあるボウルや水差し(ピッチャー)などもあります。
出典:イッタラ本国公式サイト(アイノ・アアルト)
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3)いつも、いつでも、いつまでも使いたいあなたに「ティーマ」(Teema)
出典:イッタラ本国公式サイト(ティーマ)
こちらも先ほどご紹介しましたが、これは巨匠カイ・フランクがアラビアで「キルタ」シリーズとして発表し、イッタラで「ティーマ」シリーズとして進化させたもの。
シーンや料理を選ばず、機能的であることから支持を受け続けています。食洗機や電子レンジはもちろん、なんとオーブンもOKという実用性も人気の秘訣。
出典:イッタラ本国公式サイト(ティーマ)
さらに色のバリエーションも豊富。ホワイトだけでなく、パステルカラーのピンクやブルー、グレー、さらに、ビビッドな赤や黒色などもあります。あなたはどれが好きですか?
出典:イッタラ本国公式サイト(ティーマ)
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4)色とりどりな食器で毎日を華やかにしたいあなたに「オリゴ」(Origo)
出典:イッタラ本国公式サイト(オリゴ)
プロダクト・デザイナーのアルフレッド・ハベリによってデザインされた「オリゴ」シリーズ。
発売当初は、同じグループ会社のロールストランド窯から出されました。さまざまな色がハーモニーを織りなすこのシリーズは2002年、世界の優れた工業製品に送られる「iFデザイン賞」を受賞。
イッタラの他のシリーズとも組み合わせが可能なので、すでにイッタラの食器を持っているなら、さらにおすすめです!
色は2種類。ビタミンカラーのもの(上記写真)と、色味を抑えた「ベージュ」があります。
出典:イッタラ本国公式サイト(オリゴ)
5)これぞ北欧!という愛らしいデザインが好きなあなたに「タイカ」(Taika)
出典:イッタラ本国公式サイト(タイカ)
最後に紹介するのは、北欧の絵本から飛び出してきたような、愛らしいイラストが印象的な「タイカ」シリーズ。
フィンランド語で「魔法」を意味するこのシリーズは、温かみのあるデザインだから、寒い冬の食卓やおもてなしにぴったり。
色は4種類。上記の白地以外に、深いブルーや赤をベースにしたものや、
出典:イッタラ本国公式サイト(タイカ)
白地に黒のシックなものもあります。
出典:イッタラ本国公式サイト(タイカ)
いかがでしたか?
ガラス工房としてスタートしたイッタラ。その魅力は陶磁器にも広がり、素晴らしいデザインのものがそろっています。
シリーズが違っても、組み合わせのしやすいところもイッタラの魅力。今一度、イッタラのお店やウェブサイトで食器を見てみるのもおすすめですよ!
出典:イッタラ本国公式サイト
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参考資料
2030SDGsで未来を変える‐powered by 朝日新聞
「器の教科書」(マガジンハウス)