サンタマン・レゾーの街
フランス北部ノール県ヴァランシエンヌ郡にあるサンタマン・レゾー(Saint-Amand-les-Eaux)という街。
ベルギーにほど近く北フランスの拠点の街リールから約40キロほど離れた場所にあります。またトヨタの工場があることで有名なヴァランシエンヌから約10キロ。
出典:http://www.saint-amand-les-eaux.fr(サンタマン・レゾー)
この辺りを含むオランダ南部、ベルギー西部、フランス北部にかけては、中世にフランドル地方として毛織物業を中心に商業、経済が発達しヨーロッパの先進的地域として繁栄しました。
出典:Wikipedia(サンタマン・レゾーの毛織物工業)
サンタマン・レゾーという街はスカルプ・スヘルデ地域自然公園のちょうど中心にも位置します。
この公園はスカルプ川、スヘルデ川が通っており、この街の「レゾー」とは水という意味。まさに水と自然に囲まれた美しい村です。
出典:http://www.saint-amand-les-eaux.fr(サンタマン・レゾー)
ちなみにこのサンタマン・レゾーという街の名前は時代とともに変化し、1962年に現在の名前になっています。この地域に住んでいる人達はアマン・ディノワ(男性)、アマン・ディノワーズ(女性)と呼ばれています。
この街のシンボルはサンアマン修道院。以前はエルノン修道院と呼ばれたこの修道院は、639年頃に建物で、フランスで最も古い修道院の一つです。現在は美術館として利用されており、サンタマン陶器の作品もみることができます。
出典:http://www.saint-amand-les-eaux.fr(サンアマン修道院)
スカルプ川の谷を通るトロッコ列車はバカンス客に人気。森の中を抜ける列車はマイナスイオンたっぷり、ゆっくりと寛いだ雰囲気が楽しめる村です。
出典:http://www.saint-amand-les-eaux.fr(トロッコ列車)
サンタマン陶器の歴史
サンタマンや サンアマンやとも呼ばれるサンタマン・レゾー陶器。ノール県とノール=パ・ド・カレー地域圏のいくつかの工場で造られる陶器の総称です。
時代とともに工場の移転や吸収合併を繰り返し、起源の土地名からサンタマン・レゾー陶器と呼ばれています。
サンタマン陶器とゆかりの深い土地は、北フランスのヴァランシエンヌ、オルシ、ベルギーのアマージュという街などが挙げられます。
出典:http://www.saint-amand-les-eaux.fr(サンタマン・レゾー)
サンタマン・レゾ―の陶器の始まりは、1705年にニコラ・デムティエールが陶器工場を当時のサンアマンに設立したところから始まります。
当初は、高温で1回で焼き上げるグラン・フ(Grand feu)という手法であったため、単色の濃淡使いしかできずカマイユ・ブルー(Camaïeu bleu)と呼ばれた作品を数多く製造しました。
出典: https://fracademic.com/(サンタマン・レゾー陶器)
このサンタマン・レゾーの地域とその周辺は河川と運河そして森に恵まれていたことが陶器工場に最適で、焼き上げに必要な木と船での運搬、完璧な環境に恵まれていたのです。
出典:http://www.saint-amand-les-eaux.fr(サンタマン・レゾー)
その後、工場の移転や売却などを経て、1773年からジャン・バプティストが工場を引き継ぎます。
ジャン・バプティストは18世紀の多くの陶器がそうであるように、中国陶器に影響を受け、バリエーションに富んだ多くのシノワズリ製品を作りましたが、1794年にフランス革命の影響で工場は一旦閉鎖をされます。
出典: https://www.rm-auctions.com/ (18世紀のサンタマン・レゾー陶器)
その後、1810年の再開から場所や名称変更を数多く経てた結果、 サンタマンレゾーの陶器は、年代によって刻印が異なります。その種類はなんと42種類以上。
しかし、残念ながら、1962年には最後の工場も閉鎖されサンタマン陶器の歴史にピリオドを打つこととなります。
サンタマン陶器の特徴
サンタマン・レゾーの陶器の特徴を3つ挙げてみましょう。
まずは、サンタマンレゾーの陶器の多くが厚みがあり、ルーアン陶器の装飾を思い起させる、というもの。
出典: https://encheres.catawiki.eu/(サンタマン・レゾー陶器)
また、形や装飾が非常に凝ったものであること。
チューリップやバラ、カーネーションの花束の連続の模様の装飾も特徴です。花の絵のデザインではジャン・バプティスト、ルイ・アレクサンドル=ゴードリー、ジョセフ・ステリングが有名です。
出典:Wikipedia(サンタマン・レゾー陶器)
出典: https://www.saint-amand-les-eaux.fr/(サンタマン・レゾー陶器)
そして工場で造られた製品はファイアンスファン(磁器のような陶器)とテール・ドゥ・パイプ(特別な粘土の混ぜ合わせで造られた陶器)が特徴です。
出典:Wikipedia(サンタマン・レゾー陶器)
現在のマーケットでよく見られるサンタマン・レゾーの陶器は、量産が始まった19世紀以降のものです。
年代によって作られた工場が異なり、それぞれの特徴が美しいサンタマン陶器。見つけたらぜひ裏の刻印も、是非チェックしてみて下さい。
参考資料
http://www.infofaience.com/fr/stamand-hist