マルセイユの歴史と観光スポット
地中海に面したフランス最大の港湾都市マルセイユ(Marseille)。
南仏のプロヴァンス=コート=ダジュール圏の首府で周辺人口が約85万人。パリに次ぐ人口の多さを誇る南仏の太陽あふれる街です。
映画「TAXI」の舞台になっており、下町風情あふれる港町を車で爆走するところはまさにマルセイユ的です。
出典: depositphotos.com (マルセイユ)
マルセイユの街の歴史は紀元前600年前に遡ります。古代ギリシアで繁栄したフォカイア人が築いた植民都市「マッシリア」、が現在のマルセイユの起源とされ、フランス最古の街となっています。
現在は人口の約半分が移民で北アフリカの国々との結びつきも強く、国際色豊かな街。またマルセイユは暖かい土地にみられるとても陽気でオープンな土地柄でもあります。
このマルセイユを見渡すのに最適の場所がノートル・ダム・ド・ラ・ガルド寺院(Basilique Notre-Dame de la Garde)です。
丘の上に建つローマ・ビザンチン様式のこの大聖堂は、マルセイユのシンボル。テラスから見渡す街の360度のパノラマは圧巻です。
出典: depositphotos.com (ノートル・ダム・ド・ラ・ガルド寺院)
次にマルセイユで外せない場所が旧港。19世紀まで貿易の中心地として栄えていたマルセイユの繁栄の証し。今ではヨットやレジャー用の船舶などが多く停泊しています。
またこの旧港から船で約20分のところにあるイフ城(Château d'If)も有名です。
「三銃士」の作者として知られるフランス人作家アレクサンドル・デュマ(Alexandre Dumas、1802-1870)のもうひとつの代表作「モンテ・クリスト伯」の舞台となった要塞で、海賊やスペイン軍を阻止するため、のちに政治犯や異教徒たちを幽閉する牢獄としても使われました。その佇まいはまさに小説の世界です。
出典: depositphotos.com (イフ城)
他にも「カランク」と呼ばれる入り江。自然に作られた石灰岩の崖とコバルトブルーのコントラストはまさに絶景と言わざるをえません。
出典: France.fr (カランク)
近代建築の巨匠ル・コルビジュエ(Le Corbusier、1887-1965)が設計したユニテ・ダビタシヨン(Unité d'Habitation、集合住宅・団地)も非常にユニークです。
とても考え抜かれた面白い作りのその場所は、今では一部で宿泊体験もできます。
出典: Wikipedia (ユニテ・ダビタシオン)
港町マルセイユの名産品
そんな港町マルセイユには有名な名産品がいくつかあります。 まずは港町マルセイユの食といえば、ブイヤーベース(Bouillabaisse)。
これは魚介類と貝類をサフランやニンニク、トマトで煮込んだスープです。
昔は漁師たちがとても安い魚を出汁代わりに作った料理でマルセイユの郷土料理です。マルセイユでは庶民的な料理として多くのレストランで味わえることができます。
出典: Wikipedia (ブイヤベース)
続いて日本でも人気のマルセイユ石鹸。
フランスではどの家庭にも必ずあるほどのこの石鹸、植物由来100%で肌にも自然にも優しく作られています。
17世紀にルイ14世によって定められた製造方法で本物とされるものには、植物油脂成分72%以上から「72%」の刻印が刻まれています。
出典: Wikipedia (マルセイユ石鹸)
そしてプロヴァンス陶器のファイアンス・ド・マルセイユ(faïences de Marseille、マルセイユ陶器)。
およそ16世紀ころから始まったとされるマルセイユ陶器。ムスティエ・サント・マリーという街のムスティエ焼きともゆかりが深く、プロヴァンス陶器として日本でも人気があります。
19世紀のジャン・バプティスト・パストレの邸宅を利用したマルセイユ陶器博物館には、アプト、マルセイユ、ムスティエ・サン・マリーなどのプロヴァンス産陶器を中心に1500点以上もの陶器が展示されています。
出典: Wikipedia (マルセイユ陶器博物館)
マルセイユ陶器の歴史と特徴
マルセイユ陶器の発展は1679年サン=ジャン=ドゥ=デセール地区のクレリッシー(Clérissy)という陶工が病院の薬局で使う薬入れを作ったことから始まります。
このクレリッシーはムスティエ焼きのピエール・クレリッシー(pierre clérissy)の子です。
その後、様々な陶工により発展と繁栄をしてきたマルセイユ陶器ですが、フランス革命時、ライバルのジェノバ製品がマルセイユ陶器を圧倒し、長い間マルセイユの製造は止まることとなります。
出典: Wikipedia
そんなマルセイユ陶器は形や装飾など非常にバラエティに富んでいます。それぞれの時代の陶工によって色や装飾、形などが違うので見ているものを飽きさせません。
例えば、初期の頃のヘラルド・ルロワ(Héraud-Leroy)の頃の作品は多くがカマイユ・ブルー(単色の明暗のみで浮き彫りのような効果を持つ描き方)です。
ムスティエ焼きに似ているところも特徴といえるでしょう。
出典: Wikipedia (ヘラルド・ルロワ作)
その後のジョゼフ・フォシエ(Joseph Fauchier)は装飾の絵がとても繊細なのが特徴です。
彼もまたムスティエ・サント・マリーの村とゆかりが深く、この頃のマルセイユ陶器の繁栄を約1世紀近く担い、重要な役割を果たしました。
出典: Wikipedia (ジョゼフ・フォシエ作)
1748年頃からヴーヴ・ペラン(Veuve Perrin)の作品は非常にバラエティに富んでいます。
装飾絵では、花や動物、魚に野生の動物、あらゆる風景画。また、形も皿やテリーヌ皿、シュガーポットに水入れ、ティーポットにカップにソーサー。また噴水のオーナメントや花瓶なども見られます。
この頃のマークはVPと記されています。
出典: Wikipedia (ヴーヴ・ペラン作)
ガスパール・ロバート(Gaspard Robert)の作品の特徴はカマイユ・セフィアや緑・ピンクが使われていること。また金の装飾を使うことも彼の作品の大きな特徴です。
出典: Wikipedia (ガスパール・ロバート作)
オノレ・サヴィ(Honoré Savy)は1745年に陶器の絵付け師として認定されていました。後のルイ18世も彼のアトリエを訪れたとされています。ヴーヴ・ペランから多大な影響をうけ、作品も非常に似ている作品が多いと言われています。
出典: Wikipedia (オノレ・サヴィ作)
現在では多くのマルセイユ陶器がマルセイユ陶器博物館で見ることができます。機会があればぜひ訪れて実物をご覧になってみて下さい。