スポーツ、ショッピング、美術と、観光名所が盛りだくさんの街
スペインの首都マドリードは、スペインの中心に位置し、人口は約300万人、欧州でも5番目に大きな都市と言われています。
日本からのアクセスも、最近ではイベリア航空による成田-マドリード間の直行便もでき、非常に便利になりました。
出典:depositphotos.com (マドリッド)
大都市だけあって、マドリードは観光都市としても、様々な側面を持つ街です。
サッカーでは、世界屈指のサッカークラブのレアル・マドリードの本拠地であり、ホームスタジアムである「サンティアゴ・ベルナベウ」を有し、また、スペイン最大の闘牛場であるラス・ベンタス闘牛場(観戦ももちろん可能)などがあります。
出典:depositphotos.com(闘牛)
また、芸術の街としてもよく知られています。
スペイン王家の王立美術館として始まったプラド美術館、近現代の芸術作品を多くコレクションしているソフィア王妃芸術センターの2つの超有名美術館をはじめとして、他にも多くの著名な美術館があります。
お店や美術館を歩いてお腹が減ったら、是非、郷土料理をゆっくり味わいたいところ。
マドリードのあるカスティーリャ地方は、内陸部で周辺には荒野や野原が延々と続く風土のため、肉や野菜の素材の味を生かしたコシード(Cocido)と呼ばれる煮込み料理が有名です。
出典:depositphotos.com(コシード)
また、100年以上続くとお店として知られる有名チュロス店Chocolateria San Ginesで一息つくのもお勧めです。
もっとも、味は油っこいので好みは分かれるかもしれませんが。このお店には、観光客も数多くいますが、マドリードの住民も多く訪れています。
出典:Chocolateria San Ginesホームページ
歴代の王家が育んだマドリード陶磁器の歴史
マドリードは、15世紀以降、代々のスペイン王家により首都とされて栄えました。
歴史上でスペインが一番繁栄していたといわれるのは、8-15世紀にかけて、キリスト教徒がイスラム教徒からイベリア半島を取り返した国土回復運動(レコンキスタ)が完了し、1479年にスペイン王国が成立した少し後のことです。
1492年のイサベル1世の援助を受けたコロンブスによるアメリカ大陸の発見をきっかけとする大航海時代の始まりから、1659年のフランス・スペイン戦争での敗北あたりまでは、「スペイン黄金世紀」と呼ばれる時期となります。
陶器産業が隆盛となったのも、このころです。
16世紀に、フェリペ2世がマドリードに遷都し、エル・エスコリアル宮殿で政務を執るようになった際、マドリード近郊のタラベラ・デ・ラ・レイナという街に、タイルをはじめとするその他陶器を発注し、世界中に「タラベラ焼き」の名が知られるようになります。
出典:depositphotos.com(エル・エスコリアル宮殿)
次にマドリードに大きな転機が訪れるのは、18世紀のカルロス3世の時代です。
その当時、すでにスペインは世界的地位を失ってしまっていましたが、彼は啓蒙君主として現在のマドリードにつながる街並みの整備を行います。
もともとナポリ王国の王だったカルロス3世は、ナポリにカポディモンテ窯を持っていましたが、領地を手放す際に、磁器工場は手放さずに工員らとともにスペインに移転させました。
この彼に大きな影響を与えたのが、あのマイセンを設立したザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト王を祖父に持ち、カルロス3世と結婚したマリア・アマリアです。
妻が持参したマイセンの磁器に感銘をうけたカルロス3世は、ナポリで同様の良質な陶磁器を制作しようとし、そしてその窯をマドリードへ移転させたのです。
このスペインに移転した工場が、ブエン・レティーロ王立磁器工場で、その後の陶磁器コミュニティーの形成にもつながっていきます。
アランフェス宮殿やマドリードの王宮に当時の作品が多く使われ、工場がその後戦争で攻撃を受け、移転するまで生産は続きました。
王家のコレクションを鑑賞できる美術館と王宮
スペイン王家は現在のスペイン陶磁器文化を語る上では欠かせない存在です。
中でも「プラド美術館」は、大航海時代の作品も含めたスペイン王家の芸術作品を大量に展示している美術館です。
すべてを見るには、1日ではとても足りません。何日もかけて見尽くすのも一興かもしれません。
王家コレクションを見る際に忘れてはいけないもう一つの場所が、「マドリード王宮」です。
この建物自体が、絵画や彫刻で埋め尽くされているのですが、調度品も忘れてはいけません。
タペストリーや家具、磁器も素晴らしいものがあります。豪華だったスペイン最盛期を感じられる美しい王宮です。
現在の王様はこことは別の場所に住んでおり、ここは主に公式行事で使用されています。
また、マドリードからは日帰りのちょっとした旅行になりますが、少し離れたところですと「アランフェス宮殿」が有名です。
特に「磁器の間」は前述のブエン・レティーロ磁器工場で作られた磁器が部屋を覆いつくしています。内部はロココ調、中国調、アラブ調と、トーンの違う部屋を楽しめます。
宮殿の内部はもちろんですが、庭も大変美しいです。マドリードから近郊列車(セルカニアス)を使って約1時間で行くことができます。
出典:Wikipedia(アランフェス宮殿・磁器の間)
貴族、そして民間にも根付いた陶磁器文化
陶磁器文化は、王宮の中だけにとどまっていたわけではありません。王族から貴族、そして民間人へと広がっていきました。
貴族のコレクションで有名な美術館といえば、「セラルボ美術館」があります。
セラルボ美術館は、スペイン広場に隣接しています。マドリードにはいくつかの美術館がありますが、ここは中でも群を抜いて豊かなコレクションがあることで知られています。
マイセンやウェッジウッドといった世界の有名陶磁器だけでなく、マニセス焼き、タラベラ焼き、ブエン・レティーロといったスペンインの陶磁器も展示されています。
貴族の社交界で、陶磁器が一つのステータスを表すものとして扱われていたことがうかがえます。
出典:セラルボ美術館ホームページ
同じスペイン広場の周辺では、「カンタロ」というタラベラ焼きやマニセス焼きで知られる陶器店もあります。
アンティークコレクションも展示されていますが、普段使いできるようなカラフルな陶器もたくさん販売されています。ただし、14時~17時はお昼休みなのでご注意ください。
出典:カンタロ・ホームページ
ほかにも高級商店街のセラーノ通りにはリヤドロなどの店舗もありますが、ここはあえてマドリードならではのお店を選びたいと思います。
「アンティグア・カサ・タラベラ」は、ベルを押して入店するお店です。
1904年創業時から変わっていない店内でとても雰囲気があります。さまざまな国内の工房から作られた手づくりの陶器は、どれも魅力があります。ぜひ自分だけのお気に入りを探してみてください。
出典:アンディグア・カサ・タラベラ公式ウェブサイト