「イギリスの陶器ブランド」と言ったら、まず始めに思い浮かぶのはやはり、ウェッジウッドかもしれませんね。でも、イギリスには、ウェッジウッドの他にもすばらしい食器ブランドがたくさんあるんです。
今回は、イギリスのテーブルウエアブランドとして日本でも人気が出てきている「バーレイ」を紹介したいと思います。その歴史も奥が深くて興味深いブランドなのですよ。
工房に併設されているミュージアムやショップに足を運んできたので、その様子も交えて歴史や人気シリーズなどを詳しくレポートします!
美しい絵柄とは裏腹に、幾多の困難を乗り越えて伝統の製法を守ってきた
出典:https://wabbey.net(ミュージアムにて:いろいろな絵柄のカップのバックスタンプ)
バーレイは、1851年に陶器のふるさと「ストーク・オン・トレント」の街に設立されました。
1862年にウィリアム・レイとフレドリック・ラスボーン・バージェスに引き継がれ、バージェス&レイ社になりました。バーレイという名前は、二人の苗字を組み合わせたものに由来しています。
バーレイの陶器は、「銅板転写」技術を用いて作られています。
「銅板転写」とは、模様が彫られた銅板に「ティッシュ」と呼ばれる薄い転写紙を重ねて柄を転写し、それを陶器に貼り付けるもの。
ここバーレイでは、ヴィクトリア時代から約160年以上経った今なお、当時の伝統を守り続けています。
出典:https://wabbey.net(ティッシュに転写された絵柄)
バーレイと言えば、愛らしい柄が特徴の人気ブランドですが、可愛らしさと裏腹に、その歴史は決して平坦なものではありませんでした。
1880年代当時、バーレイは工場レイアウトや導線のよさ、また廃棄物や環境汚染を減らす技術革新などで最先端を走っており、「スタッフォードシャー州(ストーク・オン・トレント一帯)の陶工業において模範となる窯元」として評価されていました。
出典:https://wabbey.net(ミュージアムにて:陶器で再現された当時の工場の様子)
ニューヨークや南アフリカにも支社を出すなど、積極的にグローバル展開もしていました。
現在では少なくなったシノワズリ(中国など東洋にインスパイアされた図柄)や人や動物をモチーフにした多色使いの水差しなど、さまざまな種類の陶器が製造されていました。
出典:https://wabbey.net(ミュージアムにて:イギリス王室関連の陶器も作られていた)
しかし、第一次世界大戦後、イギリスは不況に陥り、時代も変化していきます。
例えば、家の中にトイレが設置されるようになったことで寝室に置く陶器製の簡易トイレが廃れたり、食事がよりカジュアルになったことでディナー用食器セットが売れなくなったりするなど、生活スタイルが変化したことで陶器の需要が減ってきたのです。
その後、第二次世界大戦を経てバーレイは、モダンなデザインの商品を世に送り続けていきましたが、競合がイギリス国内だけでなく世界規模になったことなどから、1990年代に入ると徐々に経営が悪化していきます。
そこで現れたのがバーレイの陶器や建物を愛するドーリン夫妻(Rosemary and William Dorling)。
バーレイに救いの手を差し伸べ、ブランドのリニューアルをしたことで新たな顧客層も広がり始めましたが、依然として財政的に厳しい日々が続きました。
出典:StokeonTrentLive(Rosemary and William Dorling)
2010年に陶器会社デンビー社がバーレイを買収しましたが、さらなる苦難が襲いかかります。施設の老朽化が進み、いよいよ深刻な状態に陥ったのです。
しかし、そんなバーレイに2011年、手を差し伸べる人物がもう一人、現れました。
イギリス王室のチャールズ皇太子です。皇太子が代表を務めるプリンス・リジェネレーション・トラスト(The Prince's Regeneration Trust)のサポートを経て、2014年にバーレイは再スタートを切ることができたのです。
出典:Wikipedia(Charles, Prince of Wales)
このような歴史を知ると、バーレイの1つひとつの陶器への愛着がさらに深まりますね。
どこか懐かしく、それでいて洗練されたバーレイの陶器たち
出典:https://wabbey.net(バーレイのファクトリーショップ店内)
現在、バーレイで作られている陶器はミュージアムに展示されていたようなものではなく、青やピンク、緑色の愛らしいパターンのものが主流。これらのパターンは創業当時に作られたものや、100年以上経っている長く愛されてきた柄なのですよ。
バーレイの代表的なシリーズを以下、ご紹介します。
1)ブルー・キャリコ(Blue Calico)
出典:https://wabbey.net(ブルー・キャリコ)
バーレイブルーとしてまずご紹介したいのが、このブルー・キャリコ。バーレイの工房の壁にも飾られている代表的なデザインです。
これは19世紀のインディゴ・ブルーの布にヒントを得て作られたパターン。花はプルナスという桜の一種をモチーフにしています。
出典:バーレイ公式ウェブサイト(ブルー・キャリコ ティーカップ)
その飾らない美しさから、カジュアルとパーティーシーンの両方に使えます。鮮やかなブルー&ホワイトだから、日本の食卓にもなじみやすそうですね。
出典:https://wabbey.net(バーレイ工房の壁に掛けられるほど、代表的な柄であるブルー・キャリコ)
この商品をストアで見る→ブルー・キャリコ
2)ブルー・アジアティック・フェザンツ(Blue Asiatic Pheasants)
出典:https://wabbey.net(ブルー・アジアティック・フェザンツ)
牡丹の花とキジをモチーフにしたエレガントなパターン。
バーレイ創業の約10年後の1862年に生まれて以来、人々に愛され続けています。ブルー・キャリコとは対照的な淡いブルーと優美な絵柄はテーブルを上品に彩ってくれます。
出典:バーレイ公式ウェブサイト(ブルー・アジアティック・フェザンツ ケーキプレート)
この商品をストアで見る→ブルー・アジアティック・フェザンツ
3)ブルー・リーガル・ピーコック(Blue Regal Peacock)
出典:https://wabbey.net(ブルー・リーガル・ピーコック)
「王のクジャク」という意味をもつブルーのシリーズ。
1913年に生まれ、この上なく美しいパターンがメアリー王女の目に留まることとなりました。以来、人々の心を魅了しています。
出典:バーレイ公式ウェブサイト(ブルー・リーガル・ピーコック ティーカップ)
バーレイはブルーだけじゃない!好みの色を選んで
出典:https://wabbey.net(レッド・キャリコ)
バーレイのよいところは、ブルーだけでなく、赤、ピンク、緑、黒など、いろいろな色で展開していること。
例えば、ブルー・キャリコならぬ「レッド・キャリコ」もあります。あなたのライフスタイルに合う色の陶器を選ぶことができるのもバーレイの魅力の1つです。
出典:https://wabbey.net(グリーンとピンクの展開)
このほかにも、アジアンテイストな「ブルー・ウィロー」、サンザシの花をモチーフにした「ブルー・アーデン」などさまざまなパターンもあります。
また、アルファベットをモチーフにしたものも。バーレイらしさがそこはかとなく感じられますね。自分のイニシャルのマグカップがほしくなりますね。
出典:https://wabbey.net(アルファベットをモチーフにしたもの)
さらに、牛の形をした可愛らしいクリーマーも。いろいろなパターン・色で展開されています。
ミルクは牛の口から注がれるようになっていて遊び心たっぷり!ティータイムをさらに盛り上げてくれそうな逸品です。
出典:https://wabbey.net(牛の形をした遊び心たっぷりのミルク入れ)
ちなみに、バーレイの工房にはミュージアムやショップだけでなく、ティールームも併設されています。
ティールーム内にはバーレイの食器が所狭しと飾られていて、バーレイ好きには夢のような空間!ランプがティーポット型なのもかわいらしいです。
出典:https://wabbey.net(ティールーム内のティーポット型ランプ)
私はここでクリームティー(紅茶とスコーンのセット)を注文しましたが、もちろん、このティールームではバーレイの食器でお茶の時間を楽しめます!
よく見るとティーカップとソーサー、ティーポットは異なるシリーズの絵柄ですが、すべてブルーなので統一感がありますよね。
出典:https://wabbey.net(ティールームで注文したクリームティー)
いかがでしたか。
最近は百貨店などでもバーレイを扱うところが増えてきています。ぜひ一度、バーレイのテーブルウエアを手に取ってみてくださいね。
イギリスの田舎ののどかな雰囲気が感じられて、その魅力にはまるかもしれませんよ!
この商品をストアで見る→バーレイ
参考資料
『Middleport pottery -Home of Burleigh-』(The Prince's Regeneration Trust)※バーレイの足跡をまとめた公式の解説本(英語)