オランダ陶器の魅力は、「デルフト・ブルー」だけではありません!
オランダの陶器と言えば、デルフト・ブルーが有名で、このサイトでも以前、「ロイヤル・デルフト」を紹介しました。
しかし、オランダにはもう1つ、「ロイヤル」を冠する陶器ブランドがあるのをご存知でしたか。
今回は、日本ではまだあまり、知られていない「ロイヤル・ティヒラー・マッカム(Royal Tichelaar Makkum)」を紹介します。
出典:Royal Tichelaar Makkum(Turip vase)
人口わずか約3500人の小さな村にたたずむオランダで最も古い会社
ロイヤル・ティヒラー・マッカム(以下、ロイヤル・マッカム)は、オランダ北部フリースラント州のマッカム(Makkum)にその工場があります。
マッカムはアイゼル湖畔の港町で、その立地のよさを生かし、昔は貿易の中心地だったそうです。
1594年に創業して以来、400年以上に渡り、地元フリースラント州で豊富に取れる海泥土を使用し、伝統的な製法で陶器を作り続けています。
同じオランダの窯ロイヤル・デルフトは1653年創業なので、ロイヤル・マッカムはその約60年も前に陶器づくりを始めていたのです!
出典: Wikipedia(Royal Tichelaar Makkum)
実は、このロイヤル・マッカムは、オランダの中で最も古い会社だと言われています。しかし、その歴史は決して順風満帆だったわけではありません。
創業の後、18世紀から19世紀にかけては、日常使いの食器やタイルを生産していましたが、19世紀後半から食器の需要が減少してしまい、会社が生き残る方法を模索していました。
装飾品(decorative pottery)の陶器なら生き残れるかもしれない、そんな思いから、大きな改革に着手したロイヤル・マッカム。
1882年には石膏型で製造する方法が紹介され、装飾品の種類も増えていきました。 1960年にはその質の高さから王室御用達として認められ、国賓に差し上げるプレゼントとしても選ばれる等、活躍の幅を広げています。
オバマ大統領が2014年にオランダを訪れたときの会談では、ロイヤル・マッカム製のチューリップ用花瓶が花を添えました。
出典: Wikipedia (Royal Tichelaar Makkum)
陶器を作っているだけではありません!
1640年には家族経営の会社になり、代々、ティヒラー家が会社を守り続けてきましたが、2015年に13代目ヤン・ティヒラーが退任したあとは、新たな経営者のもと、さらに活躍の幅を広げています。
ロイヤル・マッカムは伝統的な陶器の製法を守り続けているだけでなく、新たな取り組みにも積極的なところが他の窯とは違うところ。
現在は、伝統的な陶器に加えて、タイルやレンガなどの建築用建材も扱っているのです。陶器とタイル、レンガとは、一見結びつかないように思いますよね。しかし、技術的には似ているところがあって、他の製品に応用しているのです。
例えば、アムステルダムにある5つ星ホテルのハイアット・リージェンシーの外壁や、陶磁器や衣装などの美術品で有名なロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館の中庭に敷かれた陶器タイル、カフェの屋根もロイヤル・マッカム製なのです。
出典: Royal Tichelaar Makkum (Hyatt Regency Spinoza Hotel Amsterdam)
また、1990年代から2010年ごろまでは、数々のオランダの有名デザイナーとコラボレーションして、新たなシリーズや陶器を生み出し、世界中から注目を集めました。陶器会社は経営難に陥る会社もある中、400年以上に渡り、時代に柔軟に対応し続けているなんてすごいですね。
デルフト・ブルーよりカラフルなロイヤル・マッカムの陶器
ロイヤル・マッカムの陶器は、日本や中国の焼き物の影響を受け、青色だけでなく、朱色や黄色を使った明るい色彩であるのが特徴です。
1つひとつ手描きの伝統的な製法で作られた陶器は、現在、ロイヤル・マッカムのウェブサイトで購入できます。以下、食器、動物モチーフの陶器、タイルの3つをご紹介します。
出典:Royal Tichelaar Makkum (sugar bowl)
日本の食卓にもなじみやすい ブルーを基調とした上品な食器
ウェブサイトでは、いろいろな絵柄の皿や鉢が購入できます。
魚が大きく描かれた皿は、港町ならでは、かもしれませんね。
ほかにも鳥や花といった自然をモチーフにした絵柄は、和食を盛り付けても違和感がなく、他の和食器との相性もよさそうです。
出典:Royal Tichelaar Makkum (Fishstrainer)
遊び心満載!表情が愛らしい、動物モチーフの陶器
ロイヤル・マッカムの陶器は、動物を題材にしたものが多いのもおもしろいところ。
サルの形をした下記の陶器は、ミルク入れ(コーヒーや紅茶を飲むときに使用)なのです。
出典:Royal Tichelaar Makkum(milk jug “monkey”)
また、ブタの貯金箱や牛の置物も表情豊かで、そばに置いているだけでなんだかほっこりした気持ちになりますね。
出典:Royal Tichelaar Makkum (Piggy bank)
伝統的な柄のブルー&ホワイトのタイル
ウェブサイトではまた、伝統的な絵柄のタイルも購入することができます。
とても美しいのですが、13cm×13cmのタイルが1枚12.65ユーロ(約1,700円)と少々、値が張ります。インテリアに部分的に使うのもいいかもしれませんね。
出典: Royal Tichelaar Makkum (Corner decoration blue "ox-head corner")
いかがでしたか?
陶器だけでなく、会社の歴史も経営も興味深いロイヤル・マッカム。
残念ながら、現在、陶器のショールームはありませんので、直接、陶器を見ることはできません。その長い歴史に裏打ちされた陶器は一度、公式ウェブサイトで見てみてくださいね。