出典:ジアン本国公式サイト
「フランスのおしゃれなデザインが大好き」「貴婦人のお茶会のような食器よりも、もう少しカジュアルで普段でも使えるような食器がほしい」―そうお思いの方がいらっしゃるかもしれません。
そんな方は、フランスの「ジアン窯」でお気に入りの食器が見つかるかもしれませんよ!
陶磁器の窯というと、「ウェッジウッド」のイギリス、「マイセン」のドイツを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、フランスにもたくさんの工房があるのです。
その昔、王侯貴族の家紋入りプレートで一躍人気になり、今も世界中にファンも多い「ジアン窯」。今回はフランスの陶器の特徴や「ジアン窯」の人気シリーズをご紹介します。
温かみのある白い陶器「ファイアンス焼」が特徴
出典:ジアン本国公式サイト(Les Filets)
ジアン窯の歴史や人気シリーズの説明に入る前に、まず、ジアン窯の食器の種類について簡単に紹介します。ジアン窯の正式名称は「Faïencerie de Gien」と言います。
「Faïencerie」とは英語では「faience」「faience factory」と訳され、日本語では「ファイアンス焼き」「ファイアンス焼の工場」という意味になります。「ファイアンス焼」とは、陶器の一種を指す言葉です。
ジアン窯の会社名にも含まれる「ファイアンス焼」とはいったい、どのようなものなのでしょうか。専門的になってしまうので、特徴を簡単に3つにまとめると
「ファイアンス焼」とは・・・
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白さが際立つ半透明の「磁器」ではなく、陶土から作られた、どちらかいうと温かみのある白い素地の「陶器」。
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ファイアンス焼はイタリアで誕生。中でも、白いファイアンス焼はその清潔感で人気を博し、フランスで広がった。
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白い素地にブルーの装飾が特徴的なオランダの「デルフト焼」(下記写真)もファイアンス焼の一種。
ジアンの街がもつ自然や地の利を生かして、白い陶器を生み出した
出典:ジアン本国公式サイト(Rocaille Blanc)
では、この窯はどのように発展していったのでしょうか。
ジアンとは、パリの南にある、電車で1時間半程度の緑豊かな小さな街です。そばを流れるロワール川流域には、古城がひしめき、ユネスコの世界遺産にも登録されています。
その豊かな土壌と温暖な気候を例えて、ロワール地方は「フランスの庭」と呼ばれているとか。ロワール川で取れるウナギやスズキなどの川魚、野ウサギなどのジビエで有名です。
出典:Wikipedia(ジアン)
そんな風光明媚な街で1821年、ジアン窯は産声を上げました。イギリス人実業家トマス・エドム・フルムがイギリスの製陶技術を生かして窯を開いたのが始まりです。
フルムは陶器の生産に適した場所としてジアンを選んで窯を設立しました。原料となる土や粘土はロワール川から、燃料となる木材は近くのオルレアンの森から、完成した陶器を運搬するのもロワール川というように、窯を開くのに好条件がそろっていたのです。
名窯の優れたデザインをオマージュし、多種多様なスタイルにチャレンジするのが「ジアン」流
出典:ジアン本国公式サイト(Oiseaux de Paradis)
ジアン窯の特徴はいろいろなテイストの食器があるところ。
過去の優れたデザインにヒントを得て、新たなシリーズを次々に生み出してきました。特に、イタリアやイギリス、日本や中国などのデザインを積極的に取り入れ、それをお手頃な価格で提供して発展してきました。
その成果を国内だけでなく、アメリカやオーストラリアなどの博覧会にも出展。そのうち、パリで開催された万国博覧会では見事、金賞の栄誉に輝きました。
その評判を聞きつけた世界の貴族や名家から、家紋入りのオーダーメイド食器セットの注文が入るようになり、一躍人気になりました。下記の写真はその一例ですが、家紋を中央にあしらった、凛としたデザインが素敵ですね。
出典:ジアン本国公式サイト(customize your tableware)
上記の写真にあるように、ジアンはまた、「ブルー」の食器でも有名です。淡いブルーから、深いミッドナイトブルーまでさまざまなニュアンスのブルーの食器があります。
例えば、伝統的なルーアン焼にヒントを得た「ルーアン37」(下記写真)や
藍のような深いブルーとどことなくオリエンタルな香りのする「ピボアン・シリーズ」も人気です。
出典:ジアン本国公式サイト(ピボアン・ブルー)
この「ピボアン・シリーズ」は牡丹をモチーフとした食器。これはどことなく、和風な香りがしませんか?
そうです。実は、1875年に登場して、当時の芸術家に影響を与えたジャポニズム(日本趣味)を代表する作品でもあります。当時から大変人気が高かったこともあり、シリーズ誕生140年を記念して、このブルー&ホワイトのバージョンが登場しました。
1989年からは、バカラやシャネル、エルメスといったフランスを代表するラグジュアリーブランドで構成される「コルベール委員会」にジアン窯も加盟し、活動しています。フランスを代表する高級食器ブランドとして、世界の人々から愛され続けています。
テイストは違うけれど、どれもフランスの洗練された香りが!ジアン窯の人気シリーズ4選
歴史や特徴の紹介はこれくらいにして、早速、ジアン窯の人気シリーズを見ていきましょう。それぞれテイストが異なるシリーズですが、どれもフランスらしく気品があって迷ってしまいますよ。
1)フランスの豊かな自然をおうちに取り入れたいあなたに!フローラルコレクション
出典:ジアン本国公式サイト(Millefleurs)
まずはジアンを代表する、世界的なベストセラー「ミルフルール」をご紹介します。
「ミルフルール」とは、「千の花」という意。ジアンの街の豊かな自然の恵みを存分に感じられるシリーズです。これがあるだけで、テーブルがぱっと華やぎますね。
この商品をストアで見る→ミルフルール
また、オリエンタルな織物にヒントを得た模様と花のコラボ―レーションが絶妙な「バガテル」もあります。
出典:ジアン本国公式サイト(Bagatelle)
この商品をストアで見る→バガテル
2)歴史に裏打ちされた王道が好きなあなたに!クラシックコレクション
代々受け継がれてきた古風なデザインが好きなあなたには、クラッシックコレクションがぴったり。中でも人気なのは、19世紀からあるデザインの復刻版として登場した「オワゾ・パラディー」。
美しい飾り羽をもつ極楽鳥をモチーフにしています。シンプルだけど華やかなデザインは料理をより引き立てること間違いなしです。
出典:ジアン本国公式サイト(Oiseaux de Paradis)
また、ブルーをベースにした「オワゾ・ブルー・フルーツ」もあります。さえずる鳥がひと休みしている木々、花なども優しいブルー1色で描かれていて柔らかな印象を醸し出しています。
さらにそこに鮮やかなフルーツや蝶が大胆に配置されていて、いいアクセントになっています。
出典:ジアン本国公式サイト(Oiseau Bleu Fruits)
また、キリリとした馬が印象的な「シュヴォー・デュ・ソレイユ」も人気。ポルトガルの歴史に由来するモチーフです。食器というよりは、絵画として、芸術品として飾っておきたくなりますね。
出典:ジアン本国公式サイト(Chevaux du Soleil)
3)いつも、どんなときも使いたいあなたに!白い陶器シリーズ
出典:ジアン本国公式サイト(フィレ)
何気ないいつもの食卓がフランスのカフェに変身―そんな白い陶器が「フィレ」シリーズです。
どんな料理にも合わせやすい白だけど、皿のシェイプはジアン窯に伝統的に伝わるものなので、ひと味もふた味も違っておしゃれ。皿の縁取りは職人が一つひとつハンドペイント。手仕事のあたたかみが伝わってくる食器です。
出典:ジアン本国公式サイト(Filet Pivoine)
縁取りの色は赤系、青系、緑系、黒系、茶色系など、全部で9色も!白い食器といってもどれにするか迷ってしまいますね。
この商品をストアで見る→フィレ
また、周りにあしらわれた、やわらかい印象のレリーフが素敵な「ロカイユ・ブラン」もありますよ。
ロカイユとは、フランス語で岩という意味で、岩や貝をかたどった曲線状の装飾の模様を指します。世界で人気のロココ調の食器です。
出典:ジアン本国公式サイト(Rocaille Blanc)
料理をのせると、料理の美しさと食器の美しさの両方が際立って、食事がスペシャルな時間になること間違いなしです!
出典:ジアン本国公式サイト(ロカイユ・ブラン)
4)フランスでのバカンスに憧れるあなたに!ヴォヤージュ・コレクション
出典:ジアン本国公式サイト(Provence)
フランスの自然や風光明媚な景色に触れた気分にさせてくれるのが「ヴォヤージュ・コレクション」です。
まずは、みずみずしい絵が特徴的な「プロヴァンス」シリーズをご紹介。
南フランス・プロヴァンスのラベンダー畑や、野菜や果物でいっぱいのマルシェ、船がゆったりとつく港の風景など、プロヴァンスの明るさと爽やかさを体感できるシリーズです。
また、「パリからジヴェルニーへ」というシリーズも人気。額縁に入れたくなるような絵ですね!
出典:ジアン本国公式サイト(Paris á Giverny)
パリから、モネが愛したジヴェルニーの庭までの風景を水彩画で表現しています。
旅の最後は、パリの観光名所へ!
パリの街並みをかたどった「Ça c’est Paris!(これがパリ!)」。家族との日曜のブランチや、気の置けない友達とのカジュアルなパーティーにも活躍しそうなシリーズですね。
出典:ジアン本国公式サイト(Ça c’est Paris)
いかがでしたか?
今もジアンの地で職人によって作られる食器たち。テイストが違うデザインであっても、どれもフランスの気品を感じさせますよね。
ジアン窯は日本には直営店はないので、お店で手に取ることが少々難しいのですが、公式サイトで詳しいシリーズの一覧をご覧になれます。ぜひ一度、訪れてみてくださいね!
出典:ジアン本国公式サイト(Millefleurs)
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参考資料
「すぐわかる ヨーロッパ陶磁の見かた」(東京美術)
「西洋陶磁入門」(岩波新書)