出典:ロールセリニャック本国公式サイト(マリー・アントワネット・コレクション)
「職人が丁寧に絵付けした食器が好き」「ロマンチックなデザインの食器が好き」、そう思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
ハンドペイントならではの温もりや愛らしいデザインがお好みの方にぜひチェックしてほしいのがフランスの「ロールセリニャック」窯!
王妃マリー・アントワネットやポンパドゥール夫人が愛したモチーフをふんだんに使ったハンドペイントの食器でひそかに人気なのです。
高いハンドペイントの技術はフランス政府だけでなく、一流ブランドにも高く評価され、実はエルメスの食器の絵付けも担う窯なのです!
今回は「ロールセリニャック」窯の歴史や特徴から、人気シリーズまで詳しく紹介します。
創業から変わることなく、職人がリモージュ磁器に一つひとつ手で絵付けする窯
「ロールセリニャック(Laure Selignac)」は、1919年にフランスで創業されました。設立は20世紀でフランスの有名窯の中では後発ですが、歴史ある工房の中でも独自の存在感でその地位を築いています。
他の窯に比べて歴史が浅いロールセリニャック窯はどのようにして発展してきたのでしょうか。この窯の特徴として2点が挙げられます。
1)熟練の職人による絵付け技術はフランス政府のお墨付き!
まず初めに挙げられるロールセリニャック窯の特徴は、完全なるハンドペイントであること。
ロールセリニャック窯はフランスの白いリモージュ磁器に職人が一つひとつ手で絵付けをしていますが、実は絵付けをするのはパリのアトリエ。
リモージュといえば、「ロワイヤル・リモージュ」、「ベルナルド」、「レイノー」など質の高いカオリンを使用した高級陶磁器の産地として有名ですが、このリモージュ磁器にパリのエスプリをきかせた絵付けで、さらに洗練された作品に仕上がっています。
ロールセリニャック窯のひと際優れた絵付け技術は高く評価され、2009年にはフランス政府から「無形文化財企業」の印である「EPVラベル」を与えられました。
日本には「人間国宝」という重要無形文化財の保持者を認定する制度がありますが、フランスのEPVラベルはその企業版といったところでしょうか。
この認証は、高度な技術と専門知識を備えた「メイド・イン・フランス」の工芸品を作る企業に与えられるもので、エルメスやバカラ、フランス国有窯のセーヴル、リモージュ磁器ブランド「ベルナルド」などもこのEPV認証を受けています。
卓越した絵付け技術を証明するのは、EPVラベルだけではありません。
実はロールセリニャックは、フランスと言ったら誰もが知るようなブランドなどとコラボレーションしていることでも知られています。例えば、ロールセリニャックはエルメスの食器の絵付けも手掛けているのです!
エルメスのアトリエで働く職人たちの仕事ぶりを間近で見られるイベント「フェスティバル・デ・メティエ(Festival des Metiers)」では、食器の絵付けの様子をロールセリニャック窯の職人がデモンストレーションしているのです。
また、あのベルサイユ宮殿や、フランス料理の超一流レストラン「トゥール・ダルジャン」などとも関係が深く、ロールセリニャック窯の技術が高く評価されていることがここからもわかります。
出典: https://www.7detable.com/ ( トゥール・ダルジャン)
2)純度99.9%の24金を使用した、立体感のある金のレリーフ技術
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(マダム・ポンパドゥール・コレクション)
上記の写真の金色の装飾部分に注目してください。
写真ではなかなかわかりづらいかもしれませんが、ロールセリニャック窯の2つ目の特徴はこの金のレリーフ。レリーフとは、浮彫・エンボスといい、立体的に浮き出ているように見える表現技法のこと。
この金のレリーフ加工(Embossed gold)はロールセリニャックの創業者であるJean Laratによって開発され、とても希少価値の高い技術です。
食器に施された凹凸のある金のレリーフは絵柄をより立体的に美しく見せるので、職人によるハンドペイントのすばらしさを体感できます。
そのほか、ロールセリニャックは食器シリーズだけでなく、ジュエリーやテーブルランプ、フィギュリンなど幅広く、展開しています。その人気は、フランス国内だけでなく、イギリス、アメリカ、日本やサウジアラビアなど、世界各国に広がっています。
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(Poudre d'Or Collection)
手描きのすばらしさを存分に味わえる!ロールセリニャックの人気シリーズ4選
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(マダム・ポンパドゥール・コレクション)
ロールセリニャックは、花や蝶などの自然モチーフや現代的なデザインのものもありますが、日本ではフランスの歴史上の人物にちなんだシリーズが人気。数あるシリーズの中から、今回は4つをピックアップして紹介します。
これらのシリーズには職人の絵付けの証として、食器の裏に製造番号や職人の署名がほどこされています。
1)ピンクのリボン、色とりどりの花など王妃のシンボルであふれる「マリー・アントワネット・コレクション」(Marie-Antoinette Collection)
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(マリー・アントワネット・コレクション)
まず初めに紹介するのは、かわいらしいピンクのリボンが印象的な「マリー・アントワネット コレクション」。ルイ16世の妻でフランス王妃マリー・アントワネットにインスパイヤされたシリーズです。
大きなリボンにライラックやピンクの花のブーケがあしらわれています。どれも王妃が愛したモチーフ。
プレートの内側を囲むようなピンクのラインの上には金のレリーフがほどこされ、美しさを引き立てています。
このシリーズがあるだけで、18世紀のベルサイユ宮殿にタイムスリップしてしまいそうな、女性らしさあふれる逸品です。
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(マリー・アントワネット・コレクション)
2)ピンクの花があでやか「マダム・ポンパドゥール・コレクション」(Madame de Pompadour Collection)
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(マダム・ポンパドゥール・コレクション)
またもや、かわいらしいコレクションが登場!これはルイ15世の寵愛を受けたポンパドゥール夫人をイメージして作られたシリーズ。
ピンクの花と緑の葉の愛らしさに、金色のレリーフが高級感を添えています。シュガーポットやクリーマーも、コロンとしたクラシカルなシェイプで美しさが一層際立っています。
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(マダム・ポンパドゥール・コレクション)
3)ナポレオンが愛したシンボル「ハチ」と「月桂樹の葉」が気品を漂わせる「エンパイヤ・コレクション」(Empire Collection)
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(エンパイヤ・コレクション)
上記で紹介した2つのコレクションとは少しテイストが違いますね。これは「アンピール様式」を好んだナポレオン1世にヒントを得たもので、ロールセリニャックのベストセラーの1つ。
エジプトなどへ遠征が多かったナポレオンはエキゾチックなテイストや古代ギリシャやローマ、エジプトなどの古典的なモチーフを好みました。
このシリーズの中央に位置する金色のハチは細やかな部分まで表現され、ロールセリニャックの金のレリーフ技術が余すところなく発揮されています。
ハチはナポレオンが好んだ「不死」「勤勉」のシンボル。ナポレオンはフランス王室と関係が深いアイリスの花の紋章の代わりにハチのモチーフを好み、洋服だけでなく、家具やカーペット、そして食器にハチ模様を多く使用しました。
ハチの周りをぐるりと囲む月桂樹の葉は「勝利」の象徴で、フランスの歴史を感じさせる作品です。
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(エンパイヤ・コレクション)
4)幸福をもたらすスズランの花を描いた「ミュゲ・ド・ボヌール・コレクション」(Muguet du Bonheur Collection)
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(ミュゲ・ド・ボヌール・コレクション)
幸福の象徴として、結婚のお祝いなどにも用いられるスズランの花。フランスには5月1日に大切な人にスズランの花を贈るという「ミュゲの日(スズランの花の日)」があるそう。
出典:Wikipedia(スズランの花)
その由来はさかのぼること16世紀。ある騎士が国王シャルル9世にスズランの花のブーケを贈ったことに始まります。
出典:Wikipedia(シャルル9世)
ちなみに、シャルル9世は、16世紀のフランスでキリスト教のカトリック(旧教)とユグノー(プロテスタント、新教)の対立が激化、サン・バルテルミの虐殺(プロテスタントの大虐殺)にショックを受けて早逝したとも言われる繊細な国王であったようです。
国王に花を贈った騎士は、幸福をもたらす花としてスズランを選んだそうで、その美しさに感動した王はその後毎年、宮廷の女性にスズランの花をプレゼントすることを決めたそう。
そんな素敵な物語にインスパイヤされた「ミュゲ・ド・ボヌール」シリーズは、「幸せのスズラン」という意味。
この食器は人に贈るだけでなく、自分自身に贈るのもいいかもしれませんね!5月の新緑のようなグリーンに清楚な白い花が可憐に咲くこのシリーズは、テーブルに爽やかな風を運んでくれます。
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(ミュゲ・ド・ボヌール・コレクション)
いかがでしたか?
ロールセリニャックのフランス本国公式サイトには、ここで紹介した以外にもたくさんのシリーズがあります。ぜひ一度、ウェブサイトを覗いてみてくださいね!
出典:ロールセリニャック本国公式サイト(マリー・アントワネット・コレクション)
参考資料