第2次世界大戦後、不死鳥のごとくよみがえった文化都市
ドレスデンはザクセン州の州都で、人口約55万人の、エルベ川沿いに開けた美しい古都です。
ヨーロッパで初めて白磁の製造に成功し、マイセン窯を作らせたことで有名なアウグスト強王の時代に、バロック様式の一大文化・芸術都市とし発展しました。
出典:depositphotos.com(ドレスデン)
第2次世界大戦中にドレスデンは空襲で大破されましたが、町の象徴であるフラウエン(聖母)教会をはじめ、歴史的建造物は戦後次々と再建され、今では往時の美しい姿を取り戻しています。
フラウエン(聖母)教会
優美なドームも持つ聖母(フラウエン)教会は、旧市街の中心に位置し、ドレスデンのシンボル的存在です。
出典:Wikipedia(修復された聖母教会)
1726年から1743年にかけて建設されましたが、1945年の空襲で破壊されてしまいました。
東ドイツ時代は「戦争への警鐘」として、瓦礫のままの姿で放置されていましたが、東西ドイツ統一後、世界規模の募金活動が行われ、2005年に修復が完了しました。
ゼンパーオーパー(ザクセン州立歌劇場)
世界でも有数の美しいオペラ劇場として知られるゼンパーオーパーは、1838年から1841年にかけて、ゴッドフリート・ゼンパーにより建設されました。
出典:depositphotos.com(ザクセン州立歌劇場)
この建物も第二次世界大戦で破壊されましたが、戦後再建され、1985年にウェーバーの「魔弾の射手」で再び幕を開けました。
世界初のオーケストラである、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の本拠地でもあります。
ドレスデン城
15世紀にザクセンの選帝侯らのための宮殿として建てられたドレスデン城は、一度火事で焼失した後、1701年にアウグスト強王によって再建されました。
出典:skd.museum(ドレスデン城)
第二次世界大戦で破壊されましたが、ドレスデン城は州立の博物館として2013年によみがえりました。
きらびやかな宝物を展示した歴史的緑の円天井、16世紀以降の工芸品を展示した新しい緑の円天井のほか、武器展示室、貨幣展示室などがあります。
ツヴィンガー宮殿(アルテ・マイスター絵画館)
ツヴィンガー宮殿は、建物に施された彫刻群が見事な、世界でも指折りの後期バロック建築です。
出典:badische-zeitung.de(ツヴィンガー宮殿)
1710年から1728年の間に、建築家のペッペルマンと彫刻家のぺルモーザーにより建設されました。現在は、世界屈指のコレクションを持つ博物館になっています。
ツヴィンガー宮殿内にあるアルテ・マイスター絵画館では、デューラー、レンブラント、ルーベンスなど名だたる巨匠の作品を鑑賞することができます。
中でも最も有名なのは、ラファエロ作の「システィーナの聖母」でしょう。画面下にいる二人の愛らしい天使は、雑貨や小物などの絵柄としてよく使用されているので、誰でもどこかで見かけたことがあるのではないでしょうか。
出典:Wikipedia(「システィーナの聖母」ラファエロ・サンティ作)
ドレスデンを一大文化都市に作り上げた、アウグスト強王の面影が感じられる名所
上にあげたフラウエン(聖母)教会、ドレスデン城、ツヴィンガー宮殿など、ドレスデンの主要な建築物のほとんどは、「アウグスト強王」として知られる、アウグスト2世(1670年~1733年)の時代に建築されたものです。
出典: Wikipedia (アウグスト2世)
アウグスト2世はヨーロッパで初めて白磁の製造を成功させ、マイセン窯を作らせた王様です。ザクセン選帝侯であり、ポーランド王でもあった彼は、芸術の愛好家であり、ドレスデンを華麗なバロック建造物であふれた文化・芸術都市に変えました。
数ある名所の中でも、特にアウグスト2世の面影が感じられる見どころを、以下にピックアップしてみました。
ツヴィンガー宮殿(陶磁器コレクション)
バロック時代のヨーロッパ諸侯は、目の色を変えて東洋の陶磁器を集めていました。
出典: http://asemus.museum (ツヴィンガー宮殿の磁器コレクション)
アウグスト強王はその中でも特に熱心な収集家で、彼の集めた膨大な数の中国や日本の陶磁器は、今では民族博物館になっている日本宮殿(ヤパーニッシェス・パレス)に収蔵されました。現在では彼の収集品を、ツヴィンガー宮殿で見ることができます。
ツヴィンガー宮殿の陶磁器コレクションでは、アウグスト強王が集めた膨大な数の東洋の陶磁器や、歴史的に貴重なマイセンの作品を鑑賞することができます。
ニューヨークの売れっ子建築家、ピーター・マリノの手によって革新的に展示された、マイセン磁器製の等身大の動物像も必見です。
出典:porzellansammlung.skd.museum(ツヴィンガー宮殿の磁器コレクション)
黄金の騎士像
アウグスト強王の面影が最もよく見られるのは、エルベ川にかかるアウグストス橋のたもとに建てられた、黄金の騎士像です。
出典:Wikipedia(黄金の騎士像)
後ろ足で立ち上がった馬に、古代ローマ風の衣装を身に着け勇ましくまたがっているのが、アウグスト強王です。
銅に金メッキをかけて仕上げてあるこの像は、アウグスト強王がバロック様式の街並みに築きあげた「新市街」、また彼が王として君臨していたポーランドがある北の方向を示しています。
大聖堂(カトリック旧宮廷教会)
出典:Wikipedia(ドレスデン大聖堂)
大聖堂は1738年から1754年の間に建設され、今でもザクセン一の規模を誇る教会です。マイセン磁器製のピエタ(十字架から降ろされたキリストを抱くマリア像)や、屋根の上にある聖人像が見事です。
内部には、アウグスト強王の心臓が収められた銀の箱があり、美人がそばを通るたびに脈打つと言われています。
マイセン磁器製の大レリーフ「君主の行列」
ドレスデン城の中庭、かつて騎士たちが武芸を競った「シュタールホーフ」の外壁にあるのが、陶製の大レリーフ「君主の行列」です。マイセン製のタイルが使用されており、長さが101メートルもあります。
出典:Wikipedia(君主の行列)
1872年から1876年にかけて、ウィルヘルム・ワルターにより作成され、20世紀初めにマイセン製のタイルに写されました。
レリーフには、ザクセン王家の歴代の君主たちが騎馬に乗った姿で描かれており、アウグスト強王の姿ももちろん見られます。王たちの他にも、学者や芸術家、職人や農民の姿が、24000枚以上を超すタイルに描かれています。
華麗なタイルで装飾された、世界一美しい牛乳屋
「町の人に新鮮な牛乳を提供したい」という思いでドレスデンに上京したパウル・グスタフ・レアンダー・フントにより、1880年に作られた牛乳屋は、「世界一美しい牛乳屋」としてギネスブックにものっています。
出典:pfunds.de( 世界一美しい牛乳屋、ドレスデン)
店全体が、乳しぼりの様子や天使、また花のモチーフなどを描いた、ビレロイ・ボッホ製の手描きタイルで装飾されています。
店の1階部分では、牛乳やチーズ、農家で手作りされたジャムなどが売られています。牛乳を原料にした石鹸や、ボディケア用品も手に入れることができます。
また、2階部分はレストランになっており、新鮮な牛乳を使ったアイスやミルクシェイク、ドレスデン名物のアイアーシェッケというチーズケーキや、ザクセン地方の郷土料理を味わうことができます。
ドイツ最古のクリスマスマーケットや、ドイツ一おいしいシュトレン(クリスマス時期に食べるお菓子)でも知られているドレスデン。
出典:shop-dresden.de(シュトレン)
四季折々に、それぞれ魅力的な顔を見せてくれる芸術の都を、ぜひ一度訪れてみませんか?
参考資料
Dresdner Molkerei Gebrüder Pfund GmbH