世界遺産登録されたシチリア島の陶器の街
シチリア島でパレルモに次ぐ第2の都市カターニア(Catania)。
そこから南西に約70キロ行った山の上にカルタジローネ(Caltagirone)という小さな街が有ります。この街の歴史は非常に古く、先史時代から人々が定住していたそうです。
出典: depositphotos.com(カルタジローネ)
その後、中世になって、シチリア島を征服したイスラム教徒は、カルタジローネの地に城を築き、アラビア語で「花瓶の丘」(qal'at-al-ghiran)と名付けました。
そのイスラム教徒たちがカルタジローネの陶器製造に新たな技術を持ち込んだと考えられています。
この街を含む周辺の8つの街は、中世から城や教会を中心に発展し、後期バロック様式で統一された建物群が美しく、「後期バロック様式の街々ヴァル・ディ・ノート(Val di Noto)」として、2002年にユネスコに世界遺産として登録されています。
なお、シチリア島には電車は走っていますが、本数が少なく不便なため、カルタジローネに行く場合はバスを利用した方が良いでしょう。カタ―ニアからカルタジローネはバスで1時間15分から1時間半です。
イタリア中にマヨリカ焼きを広めたカルタジローネ
先史時代から陶器作りが盛んだったカルタジローネに、中世になるとマヨルカ島の商人によってイスパノ・モレスク陶器(「イスパニア・ムーア人の陶器」の意味でこの地域の錫釉陶器の総称)が輸入され、その技法もムーア人(アフリカ北西部に住むイスラム教徒)の陶工たちによってもたらされました。
その後、マヨルカ島からやって来たその陶器は、錫釉を塗ることで陶器表面が不透明で真っ白になり、その上に絵付けをすると非常に鮮やかに色が映えることから、瞬く間にイタリア各地へ広まってゆき、もっぱら16世紀までにイタリアで作られた錫釉陶器は「マヨリカ焼き」と呼ばれるようになりました。
出典:depositphotos.com(セラッミックタイルの彩色)
出典:depositphotos.com(シチリア島のマヨリカ陶器)
陶器の大階段
カルタジローネの街中では、あちらこちらで陶器を見ることができます。
中でも有名なのは陶器で飾られた大階段「サンタ・マリア・デル・モンテ(Santa Maria del Monte)」で、通称は「ラ・スカーラ(La Scala)」、まさに、「ザ・階段!」です。
出典:depositphotos.com(La Scala)
この階段は1,606年にカルタジローネの旧市街と、山の手に作られた新市街を繋ぐために作られました。
作られた当初は高さもバラバラだった階段でしたが、1,844年に整備され段数が142段となり、1,954年には階段に装飾が施されました。
階段の踏み石の部分は、シチリア島東部にある活火山であるエトナ山の溶岩(12世紀、14世紀、17世紀など何度も噴火している)で作られ、前面の部分には10世紀から20世紀にかけての島に関係のあるモチーフが描かれた色鮮やかな陶器のタイルが張られています。
出典:depositphotos.com(La Scala)
階段を上がるのはちょっと大変ですが、頂上から眺めるカルタジローネの街は一見の価値ありです。階段の両端に並ぶ陶器のお店を覗きながらゆっくり上ると良いかもしれません。
この大階段は、春には花が飾られ、毎年7・8月の各2日、計4日間はイルミネーションで彩られるので、この時期に訪れるとさらに華やかで楽しいかもしれませんね。
キリストの生誕をかたどった人形(プレゼピオ)
また、カルタジローネは、陶器で出来たプレゼピオ(Presepio)が有名です。
プレゼピオとはキリストの生誕の様子などを人形などで表したもので、クリスマス時期になるとヨーロッパの街のあちこちで見かけます。 カルタジローネでは12月中旬から1月初旬にかけて、街のあちこちにプレゼピオが展示され、大階段にはシクラメンや流れ星の絵が飾られます
。観光客が少なくなる12月のシチリアですが、この時期のカルタジローネは多くの観光客で賑わいます。
出典:Wikipeia(イタリアのプレゼピオの例)
モディカのチョコレート
カルタジローネまで行ったら、是非、モディカ(Modica)まで足を伸ばしてみませんか?
出典:depositphotos.com(モディカ)
この街も、世界遺産に登録されている「ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の街々」のひとつで、街の名を特に有名にしているのはチョコレートです。
モディカのチョコレートは伝統的な製法を今でも厳密に守っており、カカオ、粉砂糖、スパイスだけで作られています。
そのため口に含んでもすぐ溶けないのです。
普段私たちが口にしているチョコレートとはちょっと違う舌ざわりに最初は驚くかもしれませんが、一度食べたら病みつきになるおいしさですよ。