サルガデロス|古代ヨーロッパの先住民族ケルト人の伝統文化を今に伝える磁器ブランド

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイト

「ブルー&ホワイトの食器が好き」「その土地の風土や文化を感じられるような素朴なデザインが好き」、そんな方もいらっしゃるかもしれませんね。

もし、あなたがそう思っているなら、スペインの「サルガデロス」という陶磁器ブランドをオススメします。

日本ではまだあまり知られていませんが、実はスペイン王室や大使が自国のお土産としてプレゼントすることも多いブランドなのですよ!

今回は、お膝元「スペイン・ガリシア地方」の歴史や特徴、サルガデロスの食器デザインの由来に加えて、おすすめシリーズも紹介します。

これを読めば、サルガデロスだけでなく、スペインに関する知識も深まって現地に行ってみたくなっちゃいますよ!

 

ガリシア地方が「スペインの異邦」と呼ばれる所以―温暖で雨が多く、ケルト文化が残っているから

巡礼像、フィニステレ岬、ガリシア地方出典:depositphotos.com(巡礼像、フィニステレ岬、ガリシア地方)

サルガデロスは、スペイン北西部の「ガリシア地方」で生まれたブランド。

ガリシア地方は国際都市バルセロナや首都マドリードと違って、日本ではあまりなじみのない地域かもしれませんね。

まず、場所を確認してみましょう。イベリア半島にフォーカスした下記の地図で赤い部分がガリシア地方です。

ガリシア州出典:Wikipedia(ガリシア州)

ガリシア地方の西側は海に面し、南はポルトガルに接しています。州都は「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」。

実はここ、イタリアのバチカンや、エルサレムと並んでキリスト教三大巡礼地の1つでもあり、世界遺産にも登録されている「サンティアゴ・デ・コンテスポーラの巡礼路」の最終目的地でもあります。

サンティアゴ・デ・コンポステーラ出典:Wikipediaサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂)

1000年以上の歴史をもつこの聖地への道は、今も多くの人が訪れ、2018年には年間30万人以上が訪問したそう!ちなみに、同じ巡礼道として日本の「熊野古道」と姉妹道提携を結んでいるんですよ。

ガリシア地方と言えば、日本でもおなじみのファッションブランド「ZARA」。今もガリシア地方の小さな街に本社を構えているんです。

ZARA本店出典:Wikipedia(Galicia-Spain)

実はガリシア地方は「スペインの異邦」と呼ばれています。なぜなのでしょうか。それには2つの理由があると考えられます。

1つめは、その気候。

スペインと言えば、ギラギラした太陽やカラっとした空気を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、ガリシア地方は海洋性気候であることから、年間を通して雨が降り、温暖なんです。

ガリシア州出典:Wikipedia(Galicia-Spain)

スペインの他の地方とは違い、ガリシア地方は緑豊かな森や渓谷の景色が美しいことから「グリーン・スペイン」という異名を持つほど。手つかずの森では牧畜が盛んなうえ、海の幸にも豊富で、自然の恵みにあふれた土地なのです。

2つ目の理由は、ケルト文化。

ケルトについてあまりご存知ない方も、エンヤ(Enya)などに代表される「ケルト音楽」なら一度は聞いたことがあるかもしれませんね。「ケルト」とは、主に紀元前をピークにヨーロッパ大陸で繁栄した、ケルト語派の言語を用いた民族のこと。

エンヤ出典:Wikipedia(エンヤ)

現在、ケルト文化圏として代表的なのが、アイルランドやイギリスのスコットランド地方とウェールズ地方。しかし、ケルト文化圏はイギリスやアイルランドだけでなく、スペインにも広がっているのです!

その証拠に、ガリシア地方にはケルト人が住んでいたという古代集落の遺跡「カストロ」が数多く点在しています。

ガリシア、カストロ出典:Wikipedia(カストロ)

また、ガリシア地方にはイギリスやアイルランドから連なるケルト文化が音楽としても息づいています。スペインの音楽というと、フラメンコに合わせて奏でられる哀愁を帯びた歌やギターの調べを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんね。

フラメンコ出典: https://www.flickr.com/ (フラメンコ)

しかし、このフラメンコの国スペインになんと、イギリス・スコットランド地方のバグパイプに似た楽器「ガイタ」(下記写真)が存在し、ガリシア音楽を形作っているのです。

ガイタ出典:Wikipedia(ガイタ)

ケルト文化がヨーロッパの広範囲にわたって広がっていたことがうかがえて、興味深いですね!

実は「ケルト」は現在のサルガデロスを理解するのに重要なキーワード。のちほど詳しく説明します!

 

苦難を乗り越え、「ガリシアらしさ」を強みに復活を遂げたサルガデロス

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイト

それでは、ここからサルガデロスの歴史を少し覗いてみましょう。

実は1875年から約100年もの間、サルガデロスは閉鎖を余儀なくされました。そんな困難に直面したにもかかわらず、自分たちのアイデンティティを見つめなおし、再度復活を遂げたというドラマチックな歴史があるのです。

時は19世紀、アントニオ・ライムンド・イバニェスという一人の男が「サルガデロス地区」に陶磁器工場を建てたことからすべては始まります。彼は起業家精神にあふれていたことから、18世紀後半には王立の海運会社を設立するなど、早くからその才能を開花させました。

1794年には、当時の首相ゴドイの庇護を受けて製鉄所を開きます。

そののち、陶磁器工場を建てることになるのですが、製鉄所と陶磁器工場って、この2つは一見、結びつかないように思えますね。しかし、実は製鉄所のインフラは陶磁器生産にも応用できるものがあり、好都合だったのです。

サルガデロス地区近郊で磁器生産に欠かせない良質のカオリンが採れたことも陶磁器を作る追い風となりました。

初期は、陶磁器生産で先を走っていたイギリス・ブリストルの陶器にインスパイヤされた白や青みがかった色の皿や花瓶、水差しを作っていたそう。

そして19世紀中ごろ、サルガデロスは黄金時代を迎えます。この時期は王室と関係が深かったことがサルガデロスのロゴマークからわかります。

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイト

王冠のイラストの上に「REAL FABRICA」とありますね。REALとは、英語で「Royal」、FABRICAは「Factory」の意。

つまり、当時、サルガデロスは「王立の工場」という名前と王冠のマークを拝するという輝かしい地位を築いていたのです。

この頃はイギリスから技術者を呼び寄せ、イギリスの陶器をオマージュした製品を生産していたそうです。例えば、侯爵をかたどったジョッキ(下記写真)など、ウイットに富んだものも作っていたようです。

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイト

しかし、黄金期は長くは続きませんでした。創業一族の不和から負債がふくらみ、1875年には閉鎖に追い込まれることになってしまったのです。

時は流れ、約100年後、サルガデロスは長い眠りから目を覚まし始めます。ガリシアをこよなく愛する2人の男が立ち上がったのです。芸術家でもあり、ビジネスマンでもあったイサック・ディアス・パルド(Isaac Díaz Pardo)と画家のルイス・セオアネ(Luis Seoane)です。

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイトイサック・ディアス・パルドとルイス・セオアネ)

「ガリシアの経済や文化を復活させたい」という思いのもと、ガリシアという土地のアイデンティティを表したデザインや品質で見事に復活したのです。

 

ケルト文化やガリシアの誇りを陶磁器にこめて

「ガリシアらしさ」―それは何なのでしょうか。

いろいろな解釈があると思いますが、ガリシアにて、ガリシアらしいものを生み出すこと、これこそがサルガデロスのいう「ガリシアらしさ」ではないかと思います。

サルガデロスは、今もガリシア地方に2つの工場をもち、ガリシアで働く職人の手によって作られています。

また、ガリシア地方に古くからあるモチーフを積極的にデザインに取り入れています。例えば、「コンチャ(Cuncha)」というホタテ貝をモチーフにした下記のシリーズ。

サルガデロス、コンチャ出典:サルガデロス本国公式サイト(コンチャ)

実はホタテ貝は、サンティアゴ・デ・コンポステーラに遺骸があるとされる「聖ヤコブ」のシンボルであり、巡礼者は巡礼の証として、ホタテ貝をぶら下げて歩くのです。

1000年以上続く巡礼のモチーフが陶磁器のデザインに反映されているって、なんだか素敵ですね!

ホタテ貝出典:Wikipedia(Camino de Santiago)

また、下記の重なり合う模様が美しい「エンカドレラド(Encadrelado)」シリーズは、ケルト文化を今に伝えるシリーズなのですよ!こちらは古代集落の遺跡「カストロ」にある石に刻み込まれた「結び目模様」にインスパイヤされたものです。

サルガデロス、エンカドレラド出典:サルガデロス本国公式サイト(エンカドレラド)

「結び目模様」や「組紐模様」は「ケルティック・ノット(Celtic Knot)」と呼ばれ、ケルト文化圏ではよく見られるモチーフだそう。下記写真の「ケルト十字架」を見ると、結び目や組紐模様で飾られていることがよくわかりますね。

ケルティック・ノット出典:Wikipedia (Celtic knot)

結び目や組紐の形には、「人の生命を守り、祝福する特別な霊力が宿っている」と考えられていたとか。縁起のよいモチーフなんですね!

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイト

このように、二人の男とそれを支えるガリシアの職人たちの努力の結果があったからこそ、サルガデロスはガリシア地方を代表する工芸品として、スペイン王室や大使のスペイン土産として用いられるようになったのでしょうね。

 

ガリシアの風を感じることができる、おすすめ食器シリーズを紹介!

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイト

おまたせしました。サルガデロスの数あるシリーズの中でも、特におすすめなものを一挙、紹介します!

まずは食器。

サルガデロスは、コーヒーカップやプレートなど単品だけでなく、6人用のディナーセットも多く扱っています。さらに、12人用のディナーセットの品ぞろえも豊富!

みんなが集まって食事をする機会が多いことの表れですね。それでは、食器シリーズの中でもおすすめのシリーズを4つご紹介します!

 

1)大ぶりな葉っぱのデザインが北欧っぽくもあり、かわいらしい「F-73」

サルガデロス、F-73出典:サルガデロス本国公式サイト(F-73)

フィンランドの食器アラビアっぽくもあり、どこか懐かしいようなデザインのこのシリーズ。

これは植物の観察から生まれたモチーフで、「自然」を象徴しているそう。深い藍色だから、和食にも、洋食にもどちらにも合いそうで、使うシーンを選びません。

 

2)教会のレリーフにインスパイヤされた模様が格調高い「ポルトマリニコ」(Portomarínico)

サルガデロス、ポルトマリニコ出典:サルガデロス本国公式サイト(ポルトマリニコ)

美しい真っ白な白磁に、格子状のレリーフが映える「ポルトマリニコ」シリーズ。白でシーンを選ばない食器ですが、こちらはれっきとした由来が!

サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路の途中の街「ポルトマリン」にある「サン・フアン教会」(下記写真)のレリーフにヒントを得たパターンなのだそう。

サン・フアン協会出典:Wikipediaサン・フアン教会)

カップだけでなく、皿や大人数のおもてなしのときにも使える深皿などもそろっています。

サルガデロス、ポルトマリニコ出典:サルガデロス本国公式サイト(ポルトマリニコ)

 

3)ケルト文化を今に伝える大胆な渦巻模様がアクセント「エスピロイデ」(Espiroide)

サルガデロス、エスピロイデ出典:サルガデロス本国公式サイト(エスピロイデ、手前の渦巻文様の皿)

水の波紋、つたなどの植物の渦巻、らせんを描く巻貝など自然の中にある渦巻模様。日本でも渦巻小紋などで親しみのある伝統的なパターンですね。

実はケルト文化でも渦巻模様は多く使われていました。

この「エスピロイデ」シリーズの渦巻模様は、およそ紀元前5世紀ごろの王冠にインスパイヤされたもの!ガリシア地方北部のア・コルーニャという港町の古代遺跡「Castro de Elviña」で発見されたものだそう。

王冠ではありませんが、同じ遺跡から発見されたペンダントにも、渦巻模様が見られます(下記写真)。

ケルト文様出典:Castillo de San Antón Archaeological and Historical Museum(Castro of Elviña)

日本でもなじみ深い渦巻模様とブルー&ホワイトの色合いだから、このシリーズも和食にも洋食にも使いやすそうですね。

サルガデロス、エスピロイデ出典:サルガデロス本国公式サイト(エスピロイデ)

 

4)修道院建築をオマージュした幾何学模様が美しい「モンフェリコ」(Monférico)

サルガデロス、モンフェリコ出典:サルガデロス本国公式サイト(モンフェリコ)

ブルーとグリーンの幾何学模様が美しい「モンフェリコ」シリーズ。

ガリシア北部の山あいの街「ポンテデウメ」にある「モンフェロ修道院(Monfero Abbey)」のファサード(正面部分)をもとにしたデザインだそう!

下記の写真は、モンテフェロ修道院のファサードの写真ではありませんが、このシリーズを彷彿とさせるデザインですね!

モンフェロ修道院出典:Wikipediaモンフェロ修道院

 

古代ヨーロッパから脈々と伝えられる、ご利益ありそうなお守りとペンダント

1)お守りとケルト文様のペンダント

サルガデロス

サルガデロスは食器の他に、ガリシア地方に古くから伝わるケルトの流れを汲んだ「お守り」や「ペンダント」も作っています。

 

2)古くからガリシア地方に伝わるお守り

サルガデロス
出典:サルガデロス本国公式サイト(Fetish Nº 1 Figa)

一風変わっていますが、ご利益がありそうな磁器のお守りです。ガリシア地方に伝わるケルト系のお守りだそう。

12種類、それぞれ違った意味があります。例えば、手をかたどった「フィーガ(Figa)」(上記写真)というモチーフは古くは「魔女に対するお守り」だったとか。転じて、いろいろなものへの「厄除け」のご利益があるようです。

他にも、「袋小路に導いていこうとするものからのお守り」という、ちょっと変わったものも。順調な人生や旅行にもいいのかもしれませんね。

サルガデロス
出典:サルガデロス本国公式サイト(Fetish Nº 11 Trampallán)

 

3)ケルト文様のお守り

次にご紹介するのは、ファッションのアクセントとしても使いやすいケルトの結び目文様のペンダント(下記写真)。

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイト(Celtic Pendant Nudo Perenne)

この文様はケルトの結婚式でよく使われるものだそう!お互いに結びつき、壊れることのない2つの紐が2人の関係を象徴することがその理由とか。

恋愛運がぐんとアップしそうですね!

このほかに、6種類のケルト文様のペンダントトップがあります。渦巻文様もおしゃれですね!

サルガデロス
出典:サルガデロス本国公式サイト(Celtic Pendant Armea)

 

最後は、愛らしい動物の置物!

その数、100種類以上。犬や猫から、鳥や魚まで。どことなくマイペースに生きる動物たちのようで、見ていてなんとも癒される作品です。

 

1)鳥

クジャクや鳩などさまざまな鳥の置物がありますが、中でも愛らしいのがこの鳥たち!

サルガデロス、鳥出典:サルガデロス本国公式サイトCollection of Waders/shorebirds)

上記写真は「岸辺の鳥コレクション」という名称。アカアシシギなどの鳥をかたどったものです。大きさは6~7センチと手乗りサイズ。みんながくつろぐリビングや仕事のデスクなんかに置くと、愛らしい表情に空気がなごむかも!

 

2)森の動物たち

リスや鹿、うさぎなどの森の動物たちも充実。

サルガデロス、カワウソ出典:サルガデロス本国公式サイト(Otter)

でも、上記写真のカワウソの表情を見てください!きょとんとしているのがなんとも可愛らしいですね。

リスもかわいい!「食いしん坊のリス」という名前がついているのも遊び心があっていいですね。数個そろえると、一気にかわいらしい森が完成しちゃいます。

サルガデロス、りす出典:サルガデロス本国公式サイトSquirrel Nº 1 Gluttonous)

 

3)ふくろう

サルガデロス、ふくろう出典:サルガデロス本国公式サイトCollection of Owls)

最後に紹介するのがフクロウ。あの映画「ハリーポッター」でもフクロウが大活躍していますが、ヨーロッパでフクロウは「知恵のシンボル」なんです。

だから、いろいろな形のフクロウのオブジェが豊富!日本でも「不苦労(ふくろう)」という当て字があるように、縁起のよい鳥とされているから、おうちに一つ置いてみるのもいいかも。

 

いかがでしたか?

サルガデロスは、日本には直営店舗はまだないようなので、ぜひ、一度、本国ウェブサイトを覗いてみてくださいね。

ここではご紹介しきれなかった、おもしろい作品に出合えるかもしれませんよ!

サルガデロス出典:サルガデロス本国公式サイト

 

参考資料

サルガデロス本国公式サイト

スペイン政府観光局―スペイン観光公式サイト(ガリシア)

NPO法人 日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会―統計情報(2019年版)

「ケルト人の歴史と文化」(原書房)

「装飾デザインを読み解く30のストーリー」(日本ヴォーグ社)

「器の教科書」(マガジンハウス)